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海外で活躍している日本人と「英語」の関係は?アーティストや俳優など。

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日本国内では、「海外で話題になっている日本人」「海外で活躍している有名人」が話題になることがありますよね。海外に住んでいる著名人も、実は結構います。が、「日本の外の環境でどの程度活動しているか」は、本当に様々だと思います。実際に日本の外で独自の地位を築いている場合もあれば、海外に居住はありつつ、活動は日本国内が対象、というパターンもあります。『海外で活躍している』と言って多くの方が思い浮かべるのは、前者のケースだと思います。

さらに、海外に活躍の舞台を広げている人について気になるのは、「海外で活躍している人って、どのくらい英語が話せるの?」「どのくらい英語ができれば、海外でやっていけるの?」ということではないでしょうか?

そこで今回は、私が独断で選んだ(笑)「海外で活躍している著名な日本人」の方と、その方々がどんなふうに英語を使っているか、にスポットを当てたいと思います。

ところで日本では、『英語が話せる』ということで知られている有名人の方は何人もいますが、子どもの頃に海外在住経験があったり、親が海外出身だったりする場合、英語学習については大きなアドバンテージがあると思います(もちろん100%ではないですが)。そこで、この記事で取り上げるのは、英語環境・多言語環境で育った経験がなく、いわゆる「普通の日本人」として育ち、その後「外国語」として英語を学びながら、海外へと活躍の場を広げている、俳優やアーティストなどの方々です。

「日本人として、どんなスタンスで英語と付き合いながら、英語圏で活動しているか?」を見ていきたいと思います!

 

真田広之さん(俳優)

真田広之さんは、日本国内でもとても有名な俳優さんです。私も日本に住んでいた頃から知っていましたが、海外で活動していることは知りませんでした。

特に、オーストラリアに来てから、たまにテレビをつけた時に、偶然やっていた映画に真田さんが出演していた、ということが何度かあり、日本の外でこんなに活躍しているんだ、と驚きました。

映画というと、「ラストサムライ」や、「47 RONIN」など、ハリウッドという印象が強いかと思いますが、真田さんの活躍はハリウッドに留まりません。私が印象に残っているのは、「The Railway Man(邦題:レイルウェイ 運命の旅路)」という、イギリス・オーストラリア映画に出演していた真田さんですね。ざっくりと内容を紹介すると……。

主人公のイギリス人男性エリックは、若い頃、将校として第二次世界大戦に参加していました。その時、シンガポールで日本軍に捉えられ、捕虜としてタイとビルマを結ぶ鉄道の建設工事に従事させられます。その労働自体も非人道的なものだった上、彼はあることから、日本軍から想像を絶する拷問を受けます。

エリックと彼の仲間は、運よく生き延び、戦後はイギリスで平穏な暮らしをするものの、30年以上経っても戦争のトラウマに苦しめられていました。ある日エリックは、かつて日本軍の憲兵隊の通訳者であり、自分の拷問に加担した永瀬という人物が、「戦争犯罪」の罪を逃れて今も生きていることを知ります。永瀬は、エリック達が拘留されていたタイの戦争捕虜収容施設で、「ツーリストガイド」をやっていました。エリックは、意を決して永瀬の元を訪れます。永瀬もエリックのことを覚えていました。怒りを心に溜めたエリックと向き合う永瀬を、真田さんが演じています。

以下のリンクでは、映画の内容のほか、視聴者のレビューも見られます。


レイルウェイ 運命の旅路 [DVD]
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この作品の元となった本は、エリック本人が実体験を書いたもので、エリックも永瀬も実在する人物です。実在の人を演じることは、俳優さんにとって大きなプレッシャーでしょうし、テーマ的にもすごく難しい役であるとともに、セリフはもちろん英語。それも、エリックとのコミュニケーションが見せ場なので、セリフが重要かつ多いです。個人的には、真田さんはとても誠実な英語の話し方で、永瀬の内面をよく表していたと思いました。

 

こちらの動画は、2013年のカナダのフィルムフェスティバルで、この映画についてのインタビューに答える真田広之さんです。

このような周りが騒がしい場で、早口の相手の質問をよく聞き取り、答えているのがすごいと思います!

この作品について、真田さんは、初めて台本を読んだ時、日本人としてショックだったけれど、同時に「この役は日本人である自分がやらなければ」と考えて、参加を決めたそうです。映画を通して、世界に、そして次の世代に過去の事実を伝え、再検証することが大切だ、という思いを強く抱いたとのこと。ご本人の言葉通り、魂のこもった素晴らしい演技だと思います。

真田さんは国内で俳優としてすでに知名度を築きながら、40歳でイギリスの舞台に挑戦、46歳でロサンゼルスに拠点を移し、その後も精力的に活動中。現在58歳です。今までに、映画とドラマだけでも20本以上の海外作品に出演しています。日本での成功に安住せず、どん欲にインターナショナルな挑戦を続けていくのがすごいと思います。英語に関しては、子どもの頃に特別な英語教育を経験したわけではなく、その点は普通の日本人と同じ。海外作品に関わる中で、必死で英語を学び続けて来られたのだろうと思います。年齢に関係なく、地道に英語力を鍛えていった成果は、今の真田さんの活躍と決して無縁ではないでしょう。

また、他のインタビューなどで見ましたが、真田さんは出演する映画で、日本関連のものが出てくる時は、たとえば作法や着物の着付け、立ち居振る舞いなど、海外の出演者への指導も積極的に行っているそうです。海外のエンタメ界にきちんとした日本文化の認知を広めたい、という思いがあるそうです。「日本人としての使命感」のようなものが、俳優としての真田さんを駆り立てているのかもしれないな、と思いました。

 

 

大江千里さん(ミュージシャン)

私たち世代には「シンガーソングライター」として親しみのある、大江千里さん!

実は、真田広之さんと同い年なんですね~。1983年に23歳でデビュー以来、自身名義の活動だけでなく、他のアーティストへの楽曲提供なども含め、J-POP界で堅実な活躍を続けていた千里さん。また、俳優やTV番組のナビゲータとしても活躍していました。

そんな中、日本での活動をすべて一旦終了し、2008年にNYへ単身移住しました。千里さん47歳の時です。長年の夢であったジャズピアニストになるため、マンハッタンにあるTHE NEW SCHOOL FOR JAZZ AND CONTEMPORARY MUSICに入学、そこで4年間ジャズピアノを学んで、2012年に卒業しました。

その後、ジャズピアニストとして全米デビュー!現在も、NYで活動を続けています。オリジナルアルバムを出したり、ライブ活動をしながら、自身のレーベルPND RECORDSも運営しています。すべて自らの手で行っているそうです!

47歳でNYに単身飛び込み、ジャズピアノを学ぶと決心したはいいけれど、最初は、ポップスのリズムが身に沁みついてしまっていて「ジャズができてない」と言われ、クラスメイトから相手にされないなどの苦労があったそうです。それをどう乗り越えていったのか……は、千里さん自身が執筆した以下の本で読むことができます。


9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学
(Amazon.co.jp)

 

千里さんは、もちろんずっと日本で活動してきた人で、英語環境で育った経験もありません。40代後半で英語環境に飛び込み、学校の授業についていくためには、英語力のUPも欠かせなかったと思います。ただ、TAMARIBAのインタビュー記事(筆者注:2019年9月現在リンク切れになっています)によると、NYでの学生生活の中で、ネイティブのように完璧な英語を話そうとしなくてもいいんだ、と悟ったそうです。トピックや、自分なりの言葉の組み合わせで、相手に興味を持ってもらうような表現を心掛けること……。英語は「うまい」とかだけじゃない、もっと感覚的な面がある、と気づいたそうです。

以下の動画は、千里さん自身が、英語で「なぜジャズピアニストへの一大転身を決心したか」について語っているYouTubeです。

ゆっくりとした英語ですが、自分の思いを伝えるために確実な言葉を選んでいる様子がわかります。彼自身の感情や思いまでが、よく伝わってくるような話し方です。丁寧なきちんとした文になっていますし、自分の言葉でこれだけ長いモノローグが話せるのはすごいと思います。やはり、相当勉強したと思います。もともと千里さんは歌詞や文を書いてきた人ですから、自分の「表現したいこと」を英語の単語を組み合わせてどう表すか、ということに気を配っている様子がうかがえます。

また、彼自身のひたむきな人柄や、あらゆる機会に対してオープンな姿勢が、言葉の壁を越えて相手の心をつかむ、という面も大いにあると思います!

 

近藤麻理恵さん(片付けコンサルタント)

「片付けコンサルタント」の近藤麻理恵さん。アメリカで撮影され、Netflixで今年1月に始まった、近藤さんの『片づけリアリティ番組』が大ブレイクし、話題になりました。

近藤さんは日本で生まれ育ち、大学時代に片付けコンサルタントのビジネスを開始しました。2010年(26歳)の時に出版した本「人生がときめく片付けの魔法」が国内で大ヒット。それ以来近藤さんは、「こんまり」の名前で広く知られるようになりました。(今年、アップデートバージョンが発売されたもよう)

人生がときめく片づけの魔法 改訂版
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その後、その本は世界各国で翻訳されます。特に英語版 The Life-Changing Magic of Tidying Up が2014年に出版されると、アメリカで人気を博しました。ちなみにオーストラリアでも、この本は人気だったようです


The Life-Changing Magic of Tidying Up: The Japanese Art of Decluttering and Organizing (The Life Changing Magic of Tidying Up) (English Edition)
(Amazon.co.jp)

こんまりさんは、海外からの仕事のオファーもたくさん来るようになり、そこで「自分の片付けメソッドは、(日本人だけでなく)世界の人を幸せにできるんじゃないか」と考え、海外へと活動拠点を移す決心をしたそうです。2016年に、ビジネスパートナーでもある夫の川原さんと、当時1歳の長女とともに、アメリカへ移住。活躍の場を広げながら、現在は二人のお子さんと一家4人でロサンゼルスに在住とのことです。

こんまりさんは、メディアに出る時は通訳の方が同席していることが多いですね。そのため、英語ができないんじゃないか、と思われるかもしれません。

しかしながら、こんまりさんは自ら英語で講演もしていますし、自身が製作した「こんまりメソッドの説明動画」では、英語で片付け法を説明しています。


たとえば上の動画の中では、かなり長時間の講演を、一人でやっています。ものすごく練習したんだろうと思います。何より、立ち居振る舞いが堂々としています。英語はゆっくりですが、ユーモアも交えながら、聴衆の心を離さず魅力的な語りを続けているのは、本当にすごいことだと思います。こんまりさんがアメリカに移住したのは、彼女が32歳の時。昔から海外志向があったわけでもないようなので、30を過ぎてから本格的に英語に触れるようになったのではないでしょうか。

こんまりさんの場合は、本が世界で人気となり、それを足掛かりとした海外移住でした。英語についても、「英語が得意だから海外に行く」というよりは、「とりあえず海外に出て、ビジネスを発展させながら英語力を上げていこう」というアプローチかもしれません。あくまで推測ですが、ご本人も現在の環境の中で、積極的に英語を勉強しているのではないか、と思います。

また、通訳の方にお願いする時も、こんまりさんは通訳まかせにせず、動作や目線、表情で、相手とコネクションを作る努力をされています。私自身もそうですが、英語に自信が持てないと、つい「避けたい」という気持ちになってしまうんですが、それよりも全力で「相手と分かり合おう」と向き合うことが、コミュニケーションを助けるのだろう、と思います。こんまりさんの、言葉を超えて「相手を知ろう」とする姿勢、その表現などは、学ぶ部分が多いと思います。

 

黒田はるかさん(俳優・声優)

日本では知られていないけど、英語圏の人達がよく知っている「日本人」もいます。その一人が、黒田はるかさんではないでしょうか。

黒田さんは、イギリス在住。女優や番組プレゼンターとして、イギリスのエンタメ界で幅広く活躍している日本人女性です。Japan Timesのインタビュー記事によると、京都に生まれ育った黒田さん、16歳の時に「演技を学びたい!」と思い、イギリス留学を決断したそうです。最初の寮生活では、英語がわからず、異文化の中でとても苦労したそうです。後に、イギリスで最も有名な演劇の学校(GSA)に入学し、東アジア人が自分一人という中で演劇を学びました。卒業後、Gorillaz というイギリス発バーチャルバンドのギタリスト、noodleの声を担当したことで、ブレイク。ちなみに noodle は日本人女性という設定でした。

それ以降、約20年もの間、イギリスのエンタメ界で「日本人キャラ」を演じる女優・声優として活躍しています。

実は私が黒田さんのことを知ったのは、我が家の息子が見ている番組 Officially Amazing に出ていたからです!

この番組は、イギリス・アメリカ・日本のチームが対決しながら、さまざまなギネス世界記録に挑戦する、という番組。黒田さんは、日本チームとして、Mr.Cherry(吉武チェリーさん)とコンビで出演しています。

番組はもちろん英語ですが、黒田さんは日本チームのナビゲータ役として、英語のナレーションをしたり、体を張って記録に挑戦する Mr.Cherry と視聴者の間をつなぐ役割をしています。

GSAで演技を学んでいる間、「RP English (received pronunciation: 標準的なイギリス英語発音)が話せなければ、イギリスのエンタメ界では仕事がもらえない」と先生に言われた黒田さん。そのため、自分が日本人であることを否定したくなるくらい、一生懸命「英語らしい英語」を練習したそうです。そんな時期もあった黒田さんですが、今はイギリスで、「英語で日本人を演じる日本人」としての地位を築いています。上の動画でもわかると思いますが、黒田さんはとても流暢な素晴らしい英語を話していますが、ネイティブとも違う。その「ネイティブっぽくない」英語が、逆に黒田さんのトレードマークになっているのでしょう。

この番組は、英語圏の子ども達に人気があるので、黒田さんはある意味、世界の子ども達にとって、初めて身近に知る日本人、かもしれませんよね。日本国内ではあまり知る人はいないと思いますが、日本の外で日本人代表として活躍している人がいる……ということも、日本の外に住んでみて私は初めて知りました。

ちなみに、黒田さんとともに Officially Amazing に登場する Mr. Cherry こと吉武チェリーさんですが、こちらも英語圏の子ども達に大人気!チェリーさんは20以上のギネス世界記録を持っているそうです。

まとめ

今回は、「英語」という言葉の壁を乗り越えて、海外へと活躍の幅を広げているアーティストや俳優さんを紹介しました。それぞれ、英語を学び始めた年齢も、スタイルも、レベルも異なりますね。今回は書き切れなかった人についても色々と調べたのですが、その中で感じたことは、本当に英語を習得する道筋は人それぞれだな、ということです。ただ共通するのは、本人の継続的な学びと繰り返しの練習が不可欠、ということ、また求められているのは、「完璧」で「上手」な英語というより、自己表現ができるかどうか、ということではないでしょうか。

自分を伝える、相手と分かり合う、そして自分の世界を広げていくために。英語を学ぶことは、「英語が話せる」こと以上に、「世界のこと、自分のことについて洞察を深めるために、学ぶ価値がある」と思いました。

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