日本人が英会話を学ぶ時、基本的な文法を覚えるのと、「こんな場面で英語では何て言う?」というパターンを知るのとでは、違った難しさがあります。文法のルールとしては「間違いではない」英語表現であっても、「実際の場面ではそういうふうには言わない」ということもあります。またそもそも、日本語表現の感覚と、英語表現の感覚とがマッチしないことがあります。そのため、日本人的な感性を表す英語がなかったり、そのまま英語にすると誤解を招くようなこともある、かもしれません。
たとえば、
「おつかれさま。」
「お世話になりました。」
「よろしくお願いします。」
といった挨拶は、日本人なら誰もが口にしますが、英語ではどんなふうに言ったらよいでしょうか?
また、
「仕方がない」「しょうがない」
「反省しなさい」
「久しぶりだなぁ」
といった言葉も、日本語ではつい口にする言葉ですが、英語ではそんな時、どう言ったらよい?
これらの言葉は、私自身がオーストラリアに来た当初、「え、これって、いったい英語ではどう言えばいいのだろう?」と困った表現でもあります。
今回は、これらの「日本語では頻繁に使うけど、直訳に当たる英語がない!」表現について、英語ではどう言ったらいいか?ということを考えてみたいと思います。
「おつかれさま」
日本語では、本当によく使いますよね!「お疲れさまです」「お疲れさまでした」。職場の同僚や仕事仲間にはもちろん、何か仕事や作業を頑張った相手に対し、ねぎらう意味で使います。
これは、私たちなりの「忙しく働いた相手を思いやる」言葉だと思うのですが、英語ではこれに直接相当するような言葉はありません。
では、たとえば、仕事が終わって帰る時、何かを頑張った人をねぎらいたい時、英語で何と言ったらよいでしょうか?
これは、シチュエーションによるところも大きいですが……。
たとえば、自分のために何かをしてくれたなら、素直に
Thank you so much!
Thank you for your work.
と、お礼を言う方がしっくり来ます。
あるいは、相手が力を尽くしたり、頑張ったことを褒めたいなら、
Great job!
You did it!
Well done!
I appreciate your work.
などなど、相手の努力と働きを称え、リスペクトすることに重点を置くのが英語らしい言い方だと感じます。ちなみに、“I appreciate it.”, “I appreciate your work.” と言えば、(あなたのしてくれたこと・仕事を)「ありがとう」の意味とも、「その価値を認めます」という意味とも受け取れます。
また、単に一日の仕事を終えて去る時などは、特に「お疲れさま」というニュアンスではなく、
Bye, see you tomorrow.
Have a nice(good, great) day(weekend).
などのように、一般的な別れの挨拶が自然でしょう。
「お世話になりました」
これも、日本人の間では頻出の挨拶です。これは、「相手に手間をかけさせた」というような、日本人らしい謙遜の意味があると思います。こういった感覚を表す定型の言葉って、やはり英語ではないのかなぁーと思います。
海外への短期留学で、ホームステイ先を去る時や、滞在した学校を去る時など、日本人の感覚では「お世話になりました」と言いたいと思います。相手に迷惑をかけた、手を煩わせた、という気持ちから、“I’m sorry” と言いたくなるかもしれませんが、そんな時はやはり、“Thank you.” というお礼の言葉が一番ナチュラルではないかと思います。
日本人の場合、そんな時、申し訳ないという感覚を表現するのが礼儀だと思いがちですが、英語ではそういう気持ちはあまり求められないように思います。それよりも、「あなたのおかげで本当によい経験ができた。とても感謝しています。」と、前向きなトーンでお礼を伝える方が、英語らしいと思います。
Thank you so much for helping me a lot.
たくさん手助けをしてくださって、ありがとうございます。
I had a great time, and it’s all thanks to you.
素晴らしい時間を過ごしました。そしてそれは全てあなたのおかげです。
I had a wonderful time with you guys*.
あなた達と素晴らしい時間を過ごせたよ。
※ 上の例の ‘guys’ の意味を知りたい方は、過去記事「英語で人に呼びかける時。相手が複数の場合は?男性女性で変わる?」をお読みください!
「よろしくお願いします」
逆に、「相手にこれからお世話になる」と言う時や、相手に何か頼みごとをする時。日本語では、「よろしくお願いします」「よろしくね」などのように、一言添えるのが習慣です。これがあると、相手に面倒を頼む時にも、ちょっと丁寧さが出せる?という感覚がありますよね。
ただ、英語の場合は、やはりうまく対応する言葉がありません。たとえばGoogle翻訳に入力してみると、
と出ます。……ただ、日本人からすると、「ありがとう」とは違うんだけどなー、という感じですよね(苦笑)。
たとえば、人に何かを頼む時、結構面倒なことを頼む場合など、英語では、“Thank you in advance.“ のように言うことがあります。「前もって(in advance)感謝を伝えておきます」的なニュアンスですかね?これは英語らしいナチュラルな表現です。
また、先の「お世話になりました」とは反対に、留学先やホームステイ先(もちろん他のどこでも)に「これからお世話になる」時、「よろしくお願いします」と言いたい時もあります。
これも日本の感覚だと、やはり「自分はこれから相手に手間をかけさせてしまう」という、一歩引いた感じを出さないといけない気がしますが、英語ではこのような場合、あまり「申し訳なさを出す」必要はない感じです。“My name is xx. Nice to meet you!” という挨拶で十分かな、と思います。
ただ、へりくだる必要はないですが、やはりフレンドリーな第一印象を与えることは大切だと思います。そんな時、とりわけ挨拶の言葉を言う必要があるならば、「これからのこと」に焦点を当てた表現の方が、英語らしくなります。
I would like to learn a lot of things from you.
あなたからたくさんのことを学びたいです。
I’m excited to experience new things.
新しいことを経験するのが楽しみです。
I hope I will learn a lot of things while I’m here.
ここにいる間にたくさんのことを学びたいです。
などは、英語らしい表現ではないでしょうか。
「仕方がない」「しょうがない」
何かがうまく行かなかった時、誰もが必ず言う「しかたがないよ」「しょうがないね」という言葉。
英語では、どう言うのでしょうか……?
一番お手本的に紹介されている英語は、
です。これはいざという時覚えておくと、使えるかもしれません。
ただ、「仕方がない」という日本語も、シチュエーションによってニュアンスが色々とありますよね。
例えば、「しょうがない、こうするしかないね。」と、他に選択肢がない様子を表すなら、
Ok, I’ll do it. I have no choice.
わかった、そうするよ。それしかないね。
のように、“I have no choice.”という表現は、英語らしく、気持ちが伝わるでしょう。
また、誰かが失敗をしてしまった時や、悪いことが起きてしまった時などに、「それはしょうがないよ」と慰めたいならば、
It’s not your fault.
あなたのせいじゃないよ。
という言い方も、英語の会話でよく使われるナチュラルな表現です。
「反省する」
悪いことをした子どもに、親が「反省しなさい!」と言うことがあります。また、反省って、自分のやったことを振りかえって悔いると共に、もうこうしないように気をつけよう、とか、次はこうしよう、と考えることです。
英語では、やはり「反省する」という日本語のニュアンスそのままの単語って、ないみたいです。
私自身が、パースで英語を習っていた時の英語の先生に教わったのは、「反省しなさい!」と英語で言うとしたら、
You must think about what you did!
Think about what you’ve done!
などのようになるそうです。直訳すると、「自分のやったことについて考えなさい」という感じです。
ただ面白いのは、この英文自体は「反省する」という意味とは限らないところですね。文脈によって、「反省しなさい」という意味になるんです。
また、例えば自分がしたことについて「反省している」と言うような場合は、
I think I should/shouldn’t have done it.
そうすればよかった/そうしなければよかったなぁ。
I think I was wrong.
私が間違っていたと思う。
のような言い方が、英語としては自然かな、と思います。
「久しぶり」
これも日本語ではとてもよく使われる言葉ですが、英語の場合、「久しぶり」と直接対応する英単語はありません。
たとえば人と久しぶりに会った時、「久しぶり!」と言いたい時は、
I haven’t seen you for ages!
長い間会ってなかったね
というような表現をします。”for ages” は、「長い期間」を表す言い方です。久しぶりに会った人との挨拶のしかたは、以下の過去記事にまとめていますので、どうぞ読んでみてください。
また、同じように、何かをするのが「久しぶり」とか、どこかに行くのは「久しぶり」のように言いたい時も、
I ate oden for the first time for ages.
おでんを食べたのは久しぶりだよ。
I haven’t been to the cinema in a long time.
しばらく映画館に行ってないなぁ
のような言い方が英語らしい表現になります。上の例文の場合、“for the first time” は「初めて」という意味ですが、“for ages”がつくと、「長い期間の中で初めて=久しぶり」という意味になります。
まとめ
日本語では本当に何気なく使う表現も、英語だと「どう言ったらいいのだろう?」と悩んでしまいます。
日本語だと一言で簡単に済ませられる表現も、それを英語で言い表す場合は、状況を考え、ニュアンスが近い英文を自分で考えて、伝えなければなりません。この場合、「こういう日本語は、英語ではこう言う」という、正解があるわけではないんですね。相手との関係性や、状況、前後の文脈が大きな役割を果たすことも多いです。
「こういう場面でこういう心情を表したい場合は、こういうふうな表現を使う」というのを覚えるには、やはり色んな場面の英語の会話を動画で見たり、英語の本やブログ、SNSのコメントを読んだりするのが、一番勉強になります。以下に、ネイティブ英語の会話が学べる、そして見て楽しい「英語圏のアニメ動画」を紹介しています。