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FOMOという英語スラング知ってる?意味、読み方、使い方は?

英語と文化

私は、自分が住んでいる西オーストラリア州・パースに関する情報を得るためと、英語の勉強を兼ねて、毎日何かしら、地元のニュース記事を読むようにしています。こないだ、パースの不動産事情に関するニュース記事を読んでいて、面白いスラングに出会いました。

HUNDREDS fight over ONE house
Perth’s property market is so hot that people are panic buying houses as if they were toilet paper.

 

このニュースの中で、西オーストラリアの不動産グループ(the Real Estate Institute of Western Australia:REIWA)の代表が、こんなことを言っていました。

“Yes, we are in a rising market, but we don’t want to get too carried away, and quite a few people are suffering FOMO at the moment who perhaps might be making decisions they regret in six months time.”

「そうです、今、我々不動産業界は、市場が上昇しています。ですが、あまり浮かれたくはありません。それに、今は多くの人がFOMOを患っており、今の決断(=家の購入)を、6か月後には後悔しているかもしれないのです。」(筆者意訳)

 

このフレーズ、何を意味しているのでしょうか?

FOMO って、なんだろう???

私は、FOMOという言葉を見たのは初めてだったので、ちょっと調べてみました。

 

というわけで今回は、このニュースの内容を解説しながら、FOMOという言葉の意味・読み方・使われ方について、説明しようと思います。

 

ニュースの背景:パースの住宅・不動産売買事情

なんとなんと、パースでは今、住宅の売れ行きがすごいらしい。

今年1月頭のこのニュース(ABC news)によると、パースでは、昨年12月の住宅の売れ行きが、前年同月の42.5%も上がったらしいです。

記事によると、通常の年だと、年末年始というのはあまり住宅市場は動かない時期らしいです。多くの人は、この期間はホリデーで海外旅行などにでかけてしまい、忙しいんですね。ところが昨年末は、コロナによるオーストラリアの国境閉鎖のため、みんな海外旅行に行けませんでした。そのため、逆にこの期間も買い手の動きが止まることがなかった、とみられます。

時期的には、西オーストラリアではここ数年、住宅価格が下がり気味でした。そして、金利も下降しています(ローンを借りるには有利)。また現在、コロナで落ち込んだ景気の回復策として、昨年・今年について、オーストラリア政府は一部の条件を満たした住宅購入者へ支援金を支給しています。

こういったメリットを利用して、「このタイミングで家を買おう!」と思う人が増えているんでしょうね。

さらに、私自身の推測として、西オーストラリア州では昨年4月以降、コロナの地域感染が出ておらず(今年1月末に感染者が一人出て、5日間の短期ロックダウンを行ったが、以降感染者は出ず、解除された)、ローカルビジネスの活動も通常に戻り失業率もコロナ前とほぼ同レベルに改善、生活に見通しが持てるようになったため、大きな買い物に前向きな気持ちになっている人が多いのかな、と感じます。

そして、今年1月には、REIWAが「2021年はパースの不動産価格が6~10%上昇する」との予測を出しました。

このような報道があった後に、冒頭に紹介したニュースが出たのです。

ニュースでは、パースで家購入の需要がものすごく増えている、と説明しています。記事によると、家の内覧会(home open)に200人もの応募があった物件もあるそうです。他にも、内覧の際には入口で列に並ばないといけないとか、実際の物件を見ずにオンラインで購入を決めてしまう人もいるとか……。

このニュースではないですが、別の記事では、「通常物件が売りに出る期間は4週間くらいだが、今は2週間以内でなくなる。」と、とある不動産業者の人が語っていました。

 

そんな感じで、とにかく今パースでは、売り住宅の需要が急激に高まっているようなんです!冒頭の記事では、昨年のコロナによるロックダウン時の混乱にたとえて、「まるでトイレットペーパーのように住宅のpanic buyingが起きている」と書いてあります。(Panic buying とは?については、こちらの過去記事を。)

家をパニック買いする、という感覚が、ちょっともう私には理解できません(汗)。

そんな文脈の中で、“and quite a few people are suffering FOMO at the moment…” というフレーズが出てきたんですね。

で、FOMOとは一体、どういう意味なんでしょうか????

 

FOMOの意味

FOMOとは、Fear Of Missing Out”の略だそうです。直訳すると「見逃すことに対する恐怖」といったところでしょうか。

miss out という句動詞(phrasal verb)は、「素晴らしいチャンスや、何かを楽しむ機会を逃す」という意味があります。たとえば以下のように、お店のセールの広告で “Don’t miss out!” = 「このチャンスをお見逃しなく!」のような宣伝文句に使われたりしますね。(または、miss out の形ではなく、Don’t miss it/this. が使われる場合もありますが、意味的には同じです。)

K mart の広告

 

Nourished Lifeの広告

※画像は https://milled.com/ より

このように、今がチャンス!と言われると、「このチャンスを逃したくない!今買わないと損をしてしまう!」という心理がどうしても働くものです……。こういったことを考えると、Fear Of Missing Out という言葉の雰囲気が、なんとなくわかると思います。

こうした「よい機会を見逃したくない」という、一種の強迫的な気持ちは、ある意味、誰もが持つ、人として当たり前の感情の作用だと思いますし、昔から珍しくはない現象ですよね?

にも関わらず、近年になって、FOMOというスラングがなぜ出来たのか、と言うと……。

FOMOという略語が世の中に出始めたのは、2004年と言われています。しかし、より一般的に使われるようになったのは、2010年以降とのこと。

この2010年代というのは、特にFaceBookTwitterなどのソーシャルメディア(SNS)の利用が、爆発的に広がった時期ですよね。個人的には、iPhoneに代表されるスマホが普及したことも大きかったと思います。自分の友達が今何をしているか、どこで誰と楽しんでいるか、が手軽にわかるようになりました。多くの人は、その新しいコミュニケーション方法に夢中になりました。ですが、しばらくすると、若い世代を中心に、自分のいないところで友達同士が楽しんでいたことを知って落ち込んだり、あるいは「みんなが自分の知らないところで楽しんでいるのでは」と不安を抱くなど、SNSがメンタルに悪影響を及ぼすことも知られるようになりました。ある研究では、SNSを見る時間と精神的な不安は、比例している、という結果が出ました。

私自身がティーンネイジャーだった30年前でも、「自分が見ていないTVドラマの話でクラスのみんなが盛り上がってて、話題についていけない」、とか、「他の友達が遊びに出かけたのに自分だけ参加できなかった」、とか、そういう悩みは決して珍しくはなかったです。

ただ2010年以降というのは、SNSが発達したことにより、それがより顕著になり、また独特の形で人々の社会生活に影響を与えるようになりました。また、情報の移り変わりも早くなり、タイミングを見逃さないように、常にタイムラインをチェックしてしまうことも、強迫性に拍車をかけていると思います。

このような現象……「みんながエンジョイしているこの瞬間を、自分だけが見逃しているんじゃないか」という恐怖感・不安感を指す言葉として、Fear Of Missing Out = FOMOという言葉が広まりました。

FOMOについてより詳しく正確に知りたい方のために、Macmillan辞典の説明をリンクしておきます。

BUZZWORD – FOMO|macmillan dictionary

調べてみて、意外と古い言葉だった!ということがわかりました。

 

FOMOの発音のしかた・読み方

FOMO、と会話で言いたい時はどう発音するか、というと、「フォゥモゥ」みたいな感じです。

Google 辞書の発音:

 

FOMOの使われ方

FOMOと言う言葉は、先に書いたように、もともとはSNSの発達から生じた「友達との交友関係の中で、乗り遅れたくない、仲間外れになりたくない、という恐れ」を指す言葉として生まれました。が、今の使われ方としては、広く「有益な情報を見逃したくない」「魅力的な機会を逃したくない」「人々が楽しんでいることを自分だけが知らないのは嫌だ」というような感情全般を指して使われることも多いようです。

2019年に書かれた、こちらのHowToGeekの記事では、FOMOの使用法やシチュエーションがわかりやすく解説されていますので、興味ある方は読んでみてください。その中で、以下のような使用例が挙げられています。

“I have a cold, but my deep-seated FOMO made me come to this party.”

「風邪ひいてるんだけど、自分の中の根深いFOMOのせいでパーティに来ちゃったよ。」

 

“Why’d he drive so far for this concert? Because FOMO, dummy!”

「なんでこのコンサートにために、わざわざ彼はそんな遠くから運転してきたのか?なぜなら、FOMOのせいだよ、バカだなぁ!」

 

ネットで”FOMO”を検索してみると、最近のものでは、「消費者のFOMOを利用したマーケティングの展開方法」といった記事がいくつもヒットします。

市場調査の結果やSNSでの口コミなどを乗せて、『その商品が人々に人気である』ことを示し、さらに期間限定の特典、限られた在庫……などで、「このチャンスを逃したくない!」と消費者に思わせる手法は、FOMO marketing と言われるそうです。

FOMOの心理というのは、企業側の販売戦略にも巧みに利用されているのですね。

 

まとめ

というわけで、冒頭のニュース記事に戻りますが、

「今は多くの人が『このチャンスを逃したくない!』という恐怖に駆られているが、それで住宅を購入した人は、6か月後には後悔しているかもしれない」

ということなんですね。

このニュースの中では、実際に家を見もせずにネットの情報や写真だけを見て購入を決める人もいる、と報じられています。特に、オンラインでの買い物が習慣化している、物件購入が初めての若い世代の人達が多いと言います。

おそるべし、FOMO。

確かに、先に書いたように、今パースの不動産事情を考えれば、今が買い時というのもわかるし、高い買い物だからこそ、有利なタイミングで買いたい、という気持ちはわかります。が、先立つものがないと買えないだろ……、と思ってしまう私は、今も借家住まいです(笑)。

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