英会話の教材には、「聞くだけで英語が話せるようになる!」と宣伝しているものがいくつかあります。
しかも、
『1日●分聞くだけ』
『たった●日間聞くだけ』
『空いた時間に聞くだけ』
で、英語が話せるようになる!といわれれば、半信半疑になりながらも、「それで本当に話せるようになるならやってみようかなぁ~」と思う人もいるでしょう。
特に、
- 忙しくて、じっくりと英語を学ぶ時間が取れない。
- 仕事があるから、海外旅行や語学留学などに行けない。
- 英会話教室に行く時間や金銭的余裕がない。
という大人の人にとっては、通勤時間や朝晩のちょっとした時間に、場所も選ばずに取り組める教材というのは、やっぱり魅かれますよね。
しかも、学校でさんざん『英文法』を叩きこまれてきたのに、結局全然話せない・・・文法を学んでも英語をしゃべれるようにはならない!と思っている人にとっては、『聞くだけ』という方法は逆に効果的に聞こえるかもしれません。
この記事では、『聞くだけ』で本当に英語が話せるようになるのか?を分析すると共に、特に大人の人が英語を学ぶ際、どんなポイントに着目したら効果的かを、私なりに書いてみたいと思います。
英語を『聞き流す』ことで得られるもの。
私は毎朝、家族のお弁当を作ったりキッチンの後片付けをしながら、西オーストラリア・パースのローカルラジオをずっと流して聞いています。だいたい、2時間くらいでしょうか。
ナビゲータの二人の会話が、ちょっとおバカで(笑)面白いんです。
たとえばこないだは、「学校や職場に持って行って嫌な思い出があるお弁当は?」みたいなテーマで、リスナーと電話をつないでトークしていました。
その中で、「韓国料理を持っていったらクサいと言われた」という話でやたら盛り上がっていました(^^;
私はまだ、日本語と同じように、はっきりと英語を理解できるほどのリスニング力はありません。
だからラジオの会話も断片的にしかわからないんですが、それでもこちらで生活し、英語にも触れていく中で、少しずつ理解できることが増えてきた、とは実感してます。
私は、自宅では家族と日本語で話すことが多いですが、テレビやラジオは、毎日触れるのは英語のみです。
あと、外に行けば、耳に入ってくる言葉は、もちろんほとんどが英語です。
英語を聞く絶対量が、日本にいた時に比べたら格段に多い。それは、英語に慣れるためには、重要なポイントだったといえます。
英語を聞き続けること自体には、良い効果があると思っています。
英語を聞く必要がないか、といったら、ゼッタイに聞くべきです!英語を話したいのなら。
私が最もメリットだと思うのは、聞くことで「英語のリズム感がわかる」ということです。
どんなにスペルを知っていても、発音記号を見ても、英語を聞いたことがなければ、話すことはできません。
また、単語一つ一つは、今なら電子辞書の音声機能で確認することもできるし(コレ、すっごい便利ですよね!)、発音がわかるとしても、文の流れの中での声の抑揚やアクセントのつけ方、どの単語を強調するか、言い方のスピードのつけ方、などなどは、やはり常日頃、さまざまなパターンの英会話を聞くことでしか、知ることができません。
私自身が感じることとしては、英語の会話の中で使われる音の高低・抑揚というのは、日本語に比べると、幅が大きいです。
また、声の高低だけでなく、強弱も、英語の会話は日本語に比べ、よりはっきりと力強くなります。
日本風に言うと、「ちょっと大げさ」ともいえるかもしれません。
また。話すスピードも、一つの文の中でも波が大きいです。
強調したい単語はゆっくりめ、つなぎの単語では、前後がくっついてかなり早口になったり、省略されたり。日本語は、どちらかというと、ひとつひとつの発音の速度がそう極端に変化することはないと思います。
こうしたことは、やはり人がしゃべっている英語を聞かなければ、まずわかりません。
「英語を聞く」ということは、リスニングの練習だけでなく、英語を話すためにも大切なことだと思います。
『聞き流す』だけではダメな理由。
ですが、ひたすら聞き続けてさえいれば、英語が理解でき、しかも話せるようになるか?といったら、まあ・・・そんなわけはないですよね。
まず、いくらひたすら英語を聞いても、文そのものの意味がわからなかったら、意味がありません。
わからない単語があったり、あるいは単語はわかるんだけど文として意味がわからない、ということもあります。単語や文法・言い回しなどを知識として知っていかないと、やっぱり「英語ができるようになる」わけではないと思います。
ましてや、知らない言葉を使って「話す」ことができるはずは、ありません。
こうした、『聞くだけ』英語教材の特徴として、
「英会話と同時に、対応する日本語訳が流れるから、意味がわかる。」
「聞いているうちに、たくさんの会話のパターンと意味が覚えられる。」
→ いつのまにかしゃべれるようになる!
みたいな説明をしているものもあります。
まあ、確かにたくさんのパターンを覚えるのは、悪くはないと思います。日常会話も、パターンってものは結構あります。シチュエーションによって、こういう単語や言い回しがよく使われる、というのを覚えてしまえば、その中ではラクに英語が使えるようになります。
記憶力が良い人や、(こういう言い方は曖昧ですが)言語習得にセンスのある人、色んな事例を見て法則性を見出すことが感覚的にできる人、などは、とにかく英語に触れるということである程度できるようになる可能性は高いと思います。
言葉を覚え始めた子どもは、そうやって話せるようになっていくんだと思います。
でもそれでやっていけるのは、むしろ元からかなり「語学が得意」な人じゃないでしょうか?
あるいは、日本にいながらそこまで英語漬けの生活を送ることを苦痛に思わない人。時間を捻出できる人。
『聞くだけで英語を話せるようになる』勉強法というのは、かなり特殊なタイプの人向けなのでは・・・。
「子どもは英語を聞くだけで話せるようになる」は本当か
また、よく「子どもは日常的に英語に触れているだけで、文法など知らなくても英語が話せるようになる」と言いますが、大人にそれを当てはめても、うまくいかないと私は思います。
特に10歳くらいまでの子なら、英語環境にいるだけで、英語が話せるようになるとは言いますが、そのかわり、英語が話せるようになるにつれて、母国語(日本語)が話せなくなっていくという問題があります。(実際に我が子を見て、よくわかります)
そのくらい、成長段階にある子どもにとっては、周囲からの刺激は大きな影響力を持つ、ということだと思います。
しかし日本語がしっかり確立された大人では、同じようにいかないのがむしろ当たり前と考えるべきです。
さらに、オーストラリアの学校では、4、5歳になると、子ども達も学校に通い始めます。さっそく、正しい文法の使い方や、語彙を増やすための訓練なども、行われます。
「過去のことを言うには、I do じゃなくて I did だよ。」
と、子どもでもちゃんと知識として教えられていきます。
もしもネイティブの人に、「文法なんて知らなくても英語は話せるよね?」と言ったら、笑われるでしょう・・・。
(もしも4歳の子どもレベルの英語を話せれば満足、というなら、文法を学ぶ必要はないかもしれません)
話すためには話す練習が必要
私自身の経験では、「聞く」と「話す」は、リンクするところもたくさんあるけど、やっぱり別々の練習が必要だと思います。
以前、英語を話すためにまず初心者でも誰でもできる練習方法として、こんな記事を書きました。
一見、地味で、イケてなくて、全然「素敵な自分」を感じられない方法ですが、話すためにはこういう練習が必要じゃないか、と私は思います。
最初は短いセンテンスで、簡単な単語で、簡単な文で、ゆっくりでいいから、言ってみる。
英語らしい発音で流暢に話す練習、というより、英語に慣れる頭の体操です。
頭でイメージしたことを英文にできるか、ということに集中します。
これを1日5分でも10分でも、思いついた時にやってみたらいいです。
ペラペラなんてしゃべらなくていいから・・・私自身の経験では、自分がそれなりに言えるような文は、聞いてもパッとわかる。文字を読んでも意味がスッと頭に入るし、書くこともできるんですね。
地道に文法の基礎を覚え、語彙や表現のバリエーションを増やしていくことが、実は一番確実な勉強法ではないでしょうか。
まとめ
色々と書いてみましたが、私自身は、『聞くだけで・・・』というような英語教材を試したことがないので、教材そのものについては、効果があるかないかはわかりません。
興味があり、お金に余裕のある方は、ぜひ試してみてください(笑)。
ただ私自身は、正直、こうした教材を薦める気にはなれないんですよね。
だって、本当に聞くだけでしゃべれていたら、3年半以上パースに住んでいる私なんて、今頃ぺらぺらじゃん!
と思うからです(笑)。
かといって、英語を聞くことだって、とても大切だと思います。
英語の勉強法には色んな方法があると思いますが、私自身は、数多くの例文に触れながら、単語を覚えて文法を理解して、自分なりに言ってみる練習をする。そういうことと並行し、上手い人の英語をじゃんじゃん聞いていくことで、相乗効果が得られると思います。
ちなみに、「英語を話すために必須の文法を学びたいなら、おすすめの本は?」ということについては、以下の投稿で紹介しています。
また、どんな英語を聞いたらいいか?については、例としてこちらに紹介しています。
何を習得するにも、時間は必要。
数か月で英語がペラペラになる、ということを目標にしないでください(笑)
ただ、「まったくしゃべれない」から「ちょっとはしゃべれる」へステップアップするのは、そう難しくないことだと思いますよ!