オーストラリアの学校教育制度。日本の受験制度との違いは?

子どもの英語

なんと!今年で我が家の長女は、西オーストラリア州の公立ハイスクールを卒業しました!

先日、いわゆる卒業式があり、それをもって西オーストラリアの教育課程が無事修了。今後どんな道を進むかは、本人の意志次第です。

親としては、本当に色んな思いがあります……!

娘の同世代の日本のお友達は、今、大学受験に向けて頑張っているようです。私自身は、日本の学校制度の中で育ち、中学受験、大学受験、と経験してきました。一方、オーストラリアの教育システムも知った今、日本との違いを色々と感じました。そして「違う」だけではなく、「学びとは何か」「中等教育(中学、高校)は何のためのものか」といった、より根本的な問題を考える機会も多々ありました。

今回は、英語からはちょっと離れますが、オーストラリアの学校制度、特に「高校と大学進学までのしくみ」を紹介したいと思います!

 

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オーストラリアは高校まで学費無料

日本の学校は、小学校、中学校、高校、と、学校が分かれています。学年を言う際には、「小学3年生」「中学3年生」のように言います。そして、国が定める義務教育は、小中の9年間、となっています。高校への進学は(建前上)任意であり、そのため公立・私立共に、家庭が学費を負担します。また、高校へ進学するためには、受験をパスしないと入れません。

ここ西オーストラリアでは、7歳になる年から学校教育が始まり(その前の1年間は、pre-primaryといい、学校教育を受けるための準備期間とされている)、成人となる18歳までの教育プログラムが政府により提供されています。学年は、Year1 ~ Year12 と続いており、Year1 ~ 6 までが Primary school(小学校)、Year7 ~ Year12 までが High school (中学・高校)で学びます。一般的な公立校の場合、進学の際に受験は必要ありません。

義務教育は Year10 までとなっています。Year11、Year12は、西オーストラリア州の定めた教育レベルを一定水準以上で修めていることを証明し(WACE ※後に述べます)、卒業後の進路に備えるための期間となります。

オーストラリア 年齢 日本
Primary school pre-primary 5-6 幼稚園
Year 1 6-7 小学校 1年生
Year 2 7-8 2年生
 :
Year 6 11-12 6年生
High School Year 7 12-13 中学校 1年生
Year 8 13-14 2年生
Year 9 14-15 3年生
Year 10 15-16 高校 1年生
Senior Secondary Year 11 16-17 2年生
Year 12 17-18 3年生

   は義務教育

 

Year10 を終えて、ハイスクールをやめる生徒もいます。一方、公立ならば、Year12 終了まで、家庭が学費を払う必要はありません。(ただし教材費などの徴収はある。年間3万円~5万円くらいだったかな)

こちらのカリキュラムでは、「大人になるまでの一貫した教育システム」というイメージがより強く、また、未成年である間は、学校教育を受ける機会が政府によって保証されている、と言えます。

 

大学進学?就職を目指す?進路を意識した学校制度

Year10 までは、義務教育であるため、基本的にすべての生徒は、政府のカリキュラムに沿った授業を受けます。ハイスクールでは、英語・数学・理科・社会 などの必修科目の他、音楽・ダンス・アート・メディア・演劇などの選択科目があります。また、第二外国語もあります。選択科目については、どんなものをやるかは、学校によって特色があります。

Year11、Year12 では、進路に応じて別々のプログラムを行います。大きくは、ATAR コースGeneralコース に分かれます(ATAR については後ほど)。ATAR コースは、ハイスクール卒業後にダイレクトに大学へ進学する生徒向けGeneral コースは、卒業後、就職やTAFE(職業に就くためのスキルや知識を学ぶ学校)への進学を目指す生徒向けです。たとえば、どちらのコースも「英語」という科目がありますが、内容は両者で違います。

そのため生徒は、Year10 の半ばには、ハイスクール卒業後に大学へ進学するかどうか、を決めなければなりません。とはいえ、うちの学校の場合は、Year11 が始まってからでも、コースを変更することは可能でした。ただ、ATAR コースの方が難易度が高いので、ATARコースからGeneralコースへ移動するケースはよくあるようですが、その逆は滅多にないようです。

また、Year10 以降は、働きながらハイスクールの単位を取る VETコース もあります。この場合、定められた技術職(たとえばシェフや水道管工など)であれば、職場で職業訓練を受けることで単位の一部を取り、同時に週に何日かハイスクールにきて勉強もすることで、学位を収めることができるようです。(この辺は私もよくはわかりませんが……)

 

大学へ入るための試験

ところで、日本の場合、高校までの「勉強」の山場と言えば、大学受験ではないでしょうか?「日本の大学は、入るのは大変だけど卒業は誰でもできる」「海外の大学は、誰でも入れるけど卒業は難しい」とよく言われますよね?

実際のところ、オーストラリアでは、ハイスクール卒業後にダイレクトに大学に進学する場合、ATAR(Australian Tertiary Admission Rank)という評価(ランク)を得なければいけません。これは、オーストラリアの同年齢の生徒の中での学力ランキング(0-100)で、相対的な学力を示すものです。

大学側は、ハイスクールから進学してくる生徒の入学に対し、「ATARスコア●点以上」という条件を課しています

ATARコースの授業を通して、このATARの評価に必要な課題やテストが行われます。その成績と、政府が行う「ATARの共通試験(筆記試験と何らかの実技試験)」の結果とを総合して、ATARのランクが決まります。

オーストラリアの場合、一学年は1月から12月で、11月頃に、Year12 の ATAR の試験(共通テスト)が行われます。この試験の結果が大学進学に影響するので、ある意味「入試」に近いものだといえますね。やはり学生たちにとっては、プレッシャーは大きいようです。

 

日本の場合、大学への一般入試では、「試験の得点」のみで判定され、内申点(高校の成績)はほとんど考慮されないシステムです。そのためか、日本の高校では、3年生になるとみんな受験対策に忙しくなり、授業をおろそかにする生徒も多く、先生もそれを黙認……、みたいなことになりがち(笑)。

が、こちらのシステムの場合、ATARコースでは、学校で行うことがそのまま進学対策なので、生徒は学校生活に集中すればよく、合理的だな、と思います。

ハイスクール卒業の意味

先にも書きましたが、オーストラリアの義務教育は Year10 までです。しかし、Year11、Year12 まで完了することは、特別な意味があります。

西オーストラリアの教育カリキュラムでは、Year 12 までの教育課程すべてを修了し、かつ、学力レベルが一定の水準を満たしている場合、WACE(Western Australian Certificate of Education)という証明が政府より授与されます。Year11, Year12 の2年間は、Senior secondary schooling と呼ばれ、この2年の教育プログラムに参加することは、WACEを取得するために必要です。

ハイスクール卒業後、大学進学する場合、ATARをクリアしなければならないことは先に書きましたが、同時にWACEの証明も必要です。また、卒業後TAFEに通う場合も、科目によってはWACEが必要です。

 

WACEを取得するには、いくつかの条件を満たさなければなりません。たとえば、「どの科目を何単位以上完了し、成績は “C” 以上がいくつなければならない」とか、「『ATARコースを4つ以上』または『Certificate II VET qualification(政府の規定する職業用教育プログラムのレベル2)を1コース』を完了する」などのように、具体的で細かい条件があります。そのため、Year10 の後半になると、Year11 と Year12 の2年間でどの科目を取るか、計画を立てなければなりません。この辺は、日本で言えば大学に近い感じがしますね。

他にも、WACEを取るためには、OLNA(Online Literacy and numeracy assessment)と呼ばれる、「英語(Reading、Writing)と数学のテスト」をパスしなければなりません。OLNAは、政府による共通の筆記試験です。

 

このように、WACEは、「学校内部での評価」と、「筆記テストによる外部の評価」を組み合わせて、認定されます。WACEが取れなくても卒業はできますが、WACEは、「これまでの学校教育を通して、政府が定めたレベルの教育を身につけている」ことを客観的に表すものであり、「社会に出て仕事に就くため、または、より高度な専門教育を受けるための、準備ができている」ことの証明となります。

 

ところで、OLNAの筆記試験は、Year10 から Year12 の間、毎年、年二回実施され、一度パスすればOK、というしくみです。そのため、ハイスクール卒業までに、計6回のチャンスがあります。そして、もし卒業までにクリアできなくても、卒業後も何度でも受けることができるシステムで、パスした段階で(他の条件を満たしていれば)WACEを取得できます。

 

WACEは、西オーストラリア州の教育カリキュラムに対する「証明書」ですが、他の州でも同等のものがあると思います。

 

まとめ

日本の学校制度では、中学校の間は「よい高校に行くこと」、高校の間は「よい大学に行くこと」……。が目標となり、特に学校の最後の期間は、次の学校へ入るための受験勉強に費やされることも多いと思います。

一方、オーストラリアの学校制度では、「今受けている教育をきちんと修めること」に重点が置かれているシステムだと感じます。

また、日本の場合、「大学進学=優」「それ以外=劣」といった「上下」の意識が色濃くあると思います。ですが、こちらの学校制度の場合、そういう感じは前面にありません(そういう意識を持った人もいるかもしれませんが)。進路を決める時にまず話題になるのが、「あなたは何をやりたいの?」「何が好きなの?得意なの?」ということです。勉強が得意で、医療や法律、リサーチなど、より専門的な道に進みたいなら、大学への進学を選ぶことになるでしょう。一方で、エンジニアや美容師、料理人など、仕事として「使える」スキルを身につけたいなら、TAFEに進学する道があります。優劣ではなく、個人の将来への道すじ(Pathway)、というとらえ方が、こちらは強いです。その理由の一つとして、こちらの就職は「スキル重視」「経験重視」があるからかな、と思います。もちろん大卒の方が、一般的には就職などに有利なようですが、職種によっては「大卒」よりも「経験やスキル」が重視されるケースもあります。

また、卒業後に「TAFEを選んだから」「仕事に就いたから」、もう大学へ行くことができない、ということもありません。ハイスクールからダイレクトに大学に入る以外にも、大学に入学する道があります。TAFEで少しずつコースのレベルを上げていき、一定の水準の教育を修めたり、実務経験を積むなど、ATARではない方法で大学入学の資格を得る、そういう道もあるそうです。

 

私自身は、「ストレートに大学に進学してどんどん学んでハッピー!」な人もいるだろうけど、すべての人がそうではない、とも思います。社会に出て、自分の興味ある仕事や活動をやっていく中で、「もっと学びたい!」「こういう専門性を身につけたい!」と心から思う分野ができた時に、大学に行ったら、より密度の濃い学びができるんじゃないか、と思います。私自身は勉強が好きだったので、普通に大学に進学し、そこで学んだことは有意義でしたが、結局その後のキャリアにはつなげられずに生きてきました。一方、学歴とは関係なく、自分の得意分野を活かして、賢くたくましく生きている人もいっぱいいます。

娘の卒業式の後、娘のサイエンスの先生と話した時に、先生が、「私は36歳で Science の学位を取ったのよ!」と言っていました。日本の場合、1回の大学入試の結果で、その後の人生が決まってしまう、というイメージがありますが、オーストラリアの教育制度を知った今では、そんなことはないんだ!!と私は思っています。

日本の受験制度も、もっとフレキシブルなものになればよいなぁ、と思います。点数をつけることで、生徒を振るい落とすのではなく、個々の学びの達成を純粋に評価する仕組みになってほしいです。

 

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