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オーストラリアの学校には制服がある?日本と違う?海外制服事情

英語と文化

日本に住んでいる中で、当たり前に社会に定着しているルールだけど、不都合や不便さを感じるものってありますよね?そんな時、「海外ではどうなのだろう???」と考えることもあると思います。

私自身は親として、また自分自身「かつての学生」としても、日本の学校制度には不満や疑問を感じる部分が多々ありました。

その一つが、学校の『制服』でしたね。

 

私自身は、公立で中学校・高校、と制服を着用していました。私自身はデザインや「可愛さ」にはこだわりはなかった半面、着るものには機能性や着心地を重視する派でした。その点、紺のプリーツスカートは一日座っているとヒダが取れてしまい、しょっちゅうアイロンがけをしなければならなかったし、自宅では洗濯もできず、雨に濡れると臭くなり、正直あまり使い勝手の良いものではありませんでしたね。紺のブレザーは、ほこりやフケが目立ってしまうので、しょっちゅうホコリ取りを滑らせていた記憶があります。また、夏服の白いブラウスは透けやすい素材で、中に着るインナーにはものすごく気を使わなければなりませんでした。

……正直、制服にはあまりよい思い出はありません(笑)。

今でも、日本では「学生服」が時々議論になることがあります。たとえば、学生服の値段の高さに嘆く親の声は、私自身SNSでよくみかけます。LGBTQの生徒の「自分の性自認に反した制服を着なければならないのは苦痛」という声が取り上げられるようになり、男女関係なく制服を選べるようにした学校も出てきました。また、特に女子生徒に対し「下着の色は白のみ」(派手な下着だと透けて見えてしまうのが風紀上よくない?問題を引き起こす?などの理由から、らしいが)とする校則も、夏前になると必ずSNSで話題になり、「人権侵害じゃないか」という声も上がります。

海外の学校では、このような問題はないのでしょうか?

私は西オーストラリア州・パースに住んでいますが、こちらの学校にも、制服(uniform)はあります!ただ、同じ「学校の制服」でも、私の知る「日本の学生服」とは違う部分も多々あります。

というわけで、実際に子ども達がこちらの公立学校に通っている親の視点で、オーストラリアの「学校の制服」について書いてみようと思います。こちらの学校では、どんな制服が着用されているのか?その目的は?日本とどう違うか?……などに着目します。

 

オーストラリアでは小学生でも制服がある?

海外(特に英語圏)の学校……といえば、アメリカやカナダを思い浮かべる人も多いと思います。アメリカやカナダの公立学校では、基本的に制服はないみたいなので、「海外では制服がない……」という人もいるようですが、同じ英語圏でも、オーストラリアは小学校(primary school)から制服着用が義務付けられています。

実際にどんな制服か、というと……。

公立の小学校のユニフォームは、学校ごとに決まっており、カラーやデザインはさまざまです。が、一般的に、上は指定カラーポロシャツTシャツに、下は指定カラーの長/半ズボンまたはスカートです。

 

上は、うちの子ども達が以前通っていた、ある小学校のユニフォームです。左の娘は、スカートのように見えますが、前にフラップがついた半ズボンです。上はポロシャツ。右の息子は、同じ色のTシャツです。

ユニフォームは、学校で購入できます。学校で買うポロシャツやTシャツには、学校のマーク(エンブレム)が入っていたり、デザインが入っていたりします。

値段は、ざっくりですが、学校指定のトップス(ポロシャツやTシャツ)で15~30ドル、ボトムスも15~30ドルくらいですかね。その他、オーストラリアの小学校は、必ずつば付き帽子をかぶらなければなりませんが、それも学校で買うと、やはりエンブレムの入ったものが10~20ドルで買えます。

他に、寒い時期に着る上着があります。パーカータイプや、ジップつきトレーナーなど、学校によってデザインは異なりますが、だいたい20~40ドルの範囲ですかね。

 

ただ、小学校の場合は、学校指定のカラーを守っていれば、市販のポロシャツやズボン等でもOK、という場合も多いです。そして、K-mart や Target といった量販店では、いかにも学校のユニフォームに使える!というような、シンプルなタイプのポロシャツやズボン、スカートが、たくさんのカラーバリエーションで売られています。しかも、ポロシャツは5ドル!とか、ズボンは8ドル!とか、安い。特に小学校時代は、すぐ汚すし、サイズもすぐに変わるので、洗い変え用に重宝している家庭も多いかと思います。

実は、上の写真も、二人のシャツは市販のものです。

今は、息子は別の小学校に通っているのですが、今の学校のユニフォームはポロシャツに独自のデザインが入っているので、我が家ではポロシャツは3枚ほど学校で購入し、ズボンは市販のものを数枚買っています。このように、各家庭の好みでフレキシブルに対応できる感じです。

 

また、日本の小学校では、「運動服」があって、体育の時には着替えたと思うのですが、パースの小学校の場合、運動着がありません。なので、このユニフォームのまま、体育も行います。

 

女の子の「dress」とは?

もう一つ、女の子用には、ワンピースタイプのユニフォームdress と言う)を指定している学校も多いです。

Kmart girl dress

上のリンク画像は、K-mart で売っているもの(image: K-martより)ですが、各学校でも、学校独自のデザインのものが販売されています。

このワンピース型の 「dress ユニフォーム」は、オーストラリアの「定番の女の子向け制服」のようですね。

ただ、私の経験した学校では、あくまで「dress も選べる」というスタンスでした。私の個人的な感覚では、実際に着ている子はかなり少ないです。理由は、「動きづらいから」かなー、と、個人的には思います。

 

オーストラリアの中・高生の制服は?

オーストラリアでは、日本の中学・高校に当たる学年が一つの学校になっており、一般的に「ハイスクール(high school)」と言われます。ハイスクールにもユニフォームがあります

ハイスクールのユニフォームは、小学校よりやや厳しく、学校指定の服を学校指定のお店(校内の場合もあるし、校外の指定の店舗の場合もある)で買う必要があります。小学校の場合は、たとえば寒い日の上着などは、市販のものでも割とOKだったりするのですが、ハイスクールでは学校指定のものを着ることがルールになっています。そのあたりの詳しいルールは、各学校により決められています。

パース周辺の公立ハイスクールの場合、男女とも、上はポロシャツまたは普通のシャツ下はズボンやスカートを組み合わせるのが基本という感じですかね。また、女子には dress タイプも用意している学校も多いです。

上の画像は、我が家の娘が以前通っていたハイスクールのユニフォーム例です。すべてのアイテムには、学校のエンブレムロゴ(写真内はぼかしてあります)が入っており、それを着用することが義務付けられています。ここの学校(公立)は、ポロシャツがメインのカジュアル系ですが、学校によっては、シャツ/ブラウス+ジャケット(ブレザー)を用意しているところもあるようです。私立はブレザータイプが多いように思います。

見るとわかるように、男女兼用のアイテムも多くなっています。どの組み合わせを選ぶかは、個人次第です。我が家の娘は、ポロシャツ+スカート/トラックパンツ、寒い季節はその上にユニセックスのトラックトップを羽織って通っていました。

値段は、学校指定のポロシャツで、だいたい35ドル前後。ボトムスは30~40ドル。上着は学校によってかなり違いがありますが、娘のトラックトップは、裏地がフリース付き、表地も目がつまってかなりしっかりした作りで、60ドル弱でした。その他、ハイスクールの場合は、体育(physical education)用のウェア(ポロ+ハーフパンツ、男女兼用)を、ユニフォームと別に購入しなければなりませんでした。それは上下合わせて60ドル前後でした。

 

日本の制服では、たとえば公立の中学校で、学校指定のものを一式そろえると、7~10万円ほどするそうですね。オーストラリアのハイスクールでは、着替えにトップスとボトムスを3着ずつ揃え、3年で全て買い替えたとしても、6年間通して約5,6万円ほどで済みます。

 

制服を着る意味は?

オーストラリアの学校では、このように、意外ときっちりと「制服」が決められています。特にハイスクールでは、学校指定のものを着用しなければならず、日本の校則に近い感じもしますよね。

オーストラリアでは、なぜ生徒たちにユニフォーム着用を義務付けているのでしょうか?

オーストラリアの教育において、ユニフォームを着用する「ねらい」として、西オーストラリア州の教育省は、

  • 学校の一員であるというイメージ帰属意識を高めるため
  • 学校のポジティブなイメージを視覚的に生み出すため
  • 「適切な」装いを学ぶ

を挙げています(Uniforms|Department of Education, Western Australia)。

さらに、学校によっては、

  • この学校の学生であるとすぐにわかる。(校内に生徒でない人物がいる場合すぐにわかる。安全上の理由から)
  • 家庭の経済的負担を軽減(余計な服飾品を買わなくて済む)

なども付け加えています。

 

これは私自身の感想ですが、オーストラリアでは、コミュニティというものがとても重視されており、意外と帰属意識が強いと感じます(そういう意味で、強調性や和を好む日本の文化と、わりと親和性があるのでは、と私は思うことがあります)。学校の場でも、生徒がその学校の一員であることに誇りを持つ、という感覚を大事にしているように思います。オーストラリアの場合、ユニフォームを着ることによって、学校としての一体感を高め、学生たちの「自分の学校に対する愛着」を高めよう、という意図が、一番大きいのかな、と感じます。

服装に関する校則は dress code と呼ばれ、ユニフォーム以外では、たとえばメイクや髪のカラーリング、ピアス、タトゥーなどについて、学校によって付加的なルールが決められています。

娘の通っていた学校では、「過度なメイクやヘアカラーは禁止」とされていましたが、実際に日本の女の子がする程度のナチュラルメイクや、髪色をやや明るくするくらいのヘアカラーは、全然OKでした。娘が可愛くネイルをして登校すると、女性の先生に「カワイイわねー!」と褒められることもあったそうです。

 

女の子にスカート強制はアリ?

冒頭にも書いた通り、日本では近年、LGBTQの生徒への配慮から、女子生徒もスラックスを選べるように、制服の選択肢を増やす学校も出てきています。オーストラリアはどうでしょうか?

こちらでは、ユニフォームのデザインやバリエーションは、各学校に決める権限があります。我が家の子ども達がこれまで通ったことのある学校では、どこも女の子用の長/半ズボンがあったので、私はそれが当たり前だと思っていました。が、どうやらそうではなく、オーストラリア国内では、女子の制服はスカートまたは dress のみ、という学校も多かったようですね。

ですが、西オーストラリア州では、2017年に、「女子生徒のユニフォームには必ずズボンの選択肢を用意しなければならない」と、すべての公立学校に義務付けられました。その直接的なきっかけは、11歳の小学生の女の子 Sofia Myhre が、女子にもズボンのユニフォームを選ばせてほしい、と、西オーストラリア州の教育省に手紙を書いたことでした。彼女は、「スカートやワンピースでは休み時間に活発な遊びができない(一方で男の子たちはやっている)」ことを不満に思い、「女子だけがスカートをはかなければならないのはフェアじゃない(unfair)」と述べました。ただ、その前から、一部の生徒や保護者から、こうした声は上がっていたそうです。が、Sofia の直訴を受けて、教育省は、すべての公立学校に、女子のユニフォームにもズボンの選択肢を必ず用意するよう、義務付けました。

その後、2018年7月の時点では、ニューサウスウェールズ州やヴィクトリア州、クイーンズランド州でも類似の方針を発表していますし、他州もなんらかの形で、女子生徒にも選択の自由を認めるよう学校に促しています(参考)。

実際に、女の子たちは、スカートやワンピースを着ている時は、スカートがめくれることなどを気にして、活動的に遊べていないことが、調査により指摘されているんですね(参考)。また、2014-2015年の調査では、女の子は同年代の男の子に比べ、約半分程度しか体を動かしていない、という結果が出たため、オーストラリア政府は、”Girls Make Your Move”というキャンペーンを立ち上げ、女の子たちにもっと体を動かすよう促しています。このように、成長期の子どもが活発に体を動かすことは、教育上、発達上の観点から、大切だと認識されています。

オーストラリアでは、この「女子の制服問題」は、単に「服装の好みの問題」という範囲を超え、「女の子にスカートを強制することは、女の子が活発に体を動かす機会を奪っている」、というレベルでとらえられています。一方で男子生徒は、ズボンをはくことで自由に体を動かせているのです。女の子だから、という理由で、「身体機能を発達させる機会」や「自由に体を動かすことで精神的に満足する機会」が制限されてしまうとしたら、それは人権や男女平等の観点でアンフェアであり、是正されなければいけません。このような議論が、制服をめぐって上がることに、私は関心を持ちました。

 

現在私の息子が通う小学校では、昨年、「女の子用の dress 型ユニフォームは完全廃止」という方針が決まりました。学校からのお知らせによると、理由としては、上に述べた一連の議論を踏まえた上で、『dress タイプの制服は特に動きづらいため』ということです。移行期間を経て、来年から dress はうちの学校のユニフォームから廃止されます。

 

まとめ

私自身は、冒頭に書いた通り、自分自身が学生だった時に、制服で「不快」な思い(笑)をしていたのですが、オーストラリアのユニフォームはそれと比べ、何しろ機能的に優れていると思いました。

まず、ポロシャツタイプだと、とにかく洗濯がラク!

シワにならないので、アイロンがけ不要、ガンガン洗っても強い。化繊タイプなので、すぐ乾く。着心地もよさそうです。スカートも、布地が綿や化繊なので、家で気軽に洗えます。上着も洗えます!

新陳代謝の激しい思春期の子ども達には、ドライクリーニングやアイロンがけが必要なものより、こういう「ガンガン洗えるタイプ」の服の方が、理にかなっていると思いますね。また、価格で見ても、オーストラリアのユニフォームは、日本のものと比べるとずいぶん手頃です。

あと、学校公式のポロシャツは割と厚手で、白でもインナーが目立たないため、特に女子生徒もストレスが少なく済むのではないかと思います。

また、女の子でもズボンタイプが選べ、人目を気にせず活動できる点は、本当にいいなぁ、と思いました。私自身、あまりスカートが好きではない子だったので、私服はほぼパンツタイプでした。学校でもズボンがはければよいな、と思ったことはありますが、「スカートを強制されることで、体を動かす機会を(不当に)奪われている」という視点は、こちらで親として過ごす中で、初めて気づかされました。LGBTQの生徒に配慮することはとっても大切で重要なことですが、さらにそうでない生徒にとっても「スカート着用を強制する制服」は不利益をもたらしている、ということは、日本でももっと気づかれてよいポイントだと思いました。

 

また、そもそもみんなが同じ服を着るべきか、ということについて、賛否両論あると思います。私自身は、制服は必要な場面もあると思いますが、学校では「とりわけ必要」でもないのでは、というスタンスです。しかし、機能的に優れている制服ならば、着てもいい、という程度ですね。

ただ、日本の場合、制服の意義として、「はみ出させない」「個性を出させない」「みんな同じになる」……ように、『枠にはめる』ための道具、というイメージも強いかと思います。特に、頭髪やスカートの長さ、下着の色チェック(!)など、日本には「見た目をそろえる」ためのキビシイ校則が存在しており、制服もそれと強く関連しています。しかし、時にはそれが「人権侵害」に当たるほど、過度なケースも見られます。

一方、こちらの場合は、基本的に「ユニフォームを着ることで、この誇るべき学校の一員であることを示そう!」みたいな点が、一番重視されていると感じます。学生は、学校のルールをリスペクトしてユニフォームを着るし、学校側は、生徒が最低限のルールを守っていれば、それ以外の部分は生徒個人を尊重する、という基本姿勢があります。かつ、近年は生徒の多様なバックグラウンドに対応するよう、選択肢が見直されてきています。日本でも、生徒達にとって最もよい形の「制服」とは?という議論が深まるとよいなぁ、と思ってます。

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