人とコミュニケーションする時、初歩的な会話術の一つが、「相手にお願い事をする」ことではないでしょうか。
相手に何かをお願いする時、やはり「相手の気分を害さないだろうか?」「迷惑にならないだろうか?」ということは、誰しもが考えます。特に、ちょっと面倒な手間をかけさせなければならない時ほど、少しでも相手にイヤな思いをさせないようにお願いしたい、と思いますよね。
日本語だったら、相手を思いやった言い方も自然とできるけど、英語の場合はどうすれば……?と思う人もいるのでは。
たとえば、メールを送ってほしい場合、
Email me later.
「後でメールして。」
親しい場合はOKだけど、かしこまったシチュエーションでは、ちょっと失礼かも。
Please email me later.
後でメールしてください。
please をつければ、丁寧な表現になります。場合によってはこれで十分でしょう。
でも、言葉はコミュニケーション。相手に何かをお願いするということは、何かを「やらせる」わけですから、やはり相手の意志を尊重しつつ「やってもらえたら助かる」と伝えることは、時として信頼関係を築く上で大切な会話術です。
そんな時、英語ではどう言ったらよいでしょうか?
英語でも、「気軽な頼み方」や「相手を気遣った丁寧な頼み方」というのはあります。
「相手との関係」や、頼みたい内容の「手間の度合い」などに応じて、表現を使い分ける必要があります。
今回の記事では、英語で相手に「お願いする」時の言い方を、バリエーションごとに紹介します。
お願いの基本:Can と Could
相手に何かを頼む時、最もシンプルで簡単な言い方は、
Can I … ?
Can you … ?
という言い方です。
Can I … ? は、直訳の意味では「私は…していいですか?」という『許可』を求める言い方です。
が、文脈によって、相手にお願いする言い方になります。お店で店員さんに何かをお願いする時などには、とってもよく使う言い方です。
例文)
Can I have two coffees?
コーヒー2ついただけますか?
Can I have the name of that product?
その商品の名前を教えていただけますか?
Can I have it wrapped?
(それを)包んでいただけますか?
※ have something 動詞+ed(過去分詞) = 物を~してもらう。
また、日常的なシチュエーションで、家族や親しい友人、同僚などに何かを頼む時には、Can you …? が最も良い言い回しでしょう。
海外旅行者が、お店や空港などでスタッフに何かのサービスをお願いする場合も、まずはこの言い方で大丈夫です。
例文)
Can you write down the name of that place for me?
その場所の名前を(私のために)書いて(メモして)いただけますか?
Can you say that again?
(それを)もう一度言ってもらえますか?
Can you email me those documents?
それらの書類をメールで送ってもらえますか?
Can you help me move this table?
このテーブルを動かすの、手伝ってくれる?
※ help someone do = 誰かが(何かを)するのを手助けする(help me to ではないので注意)
Can を Could にすれば、より丁寧な言い方になります。
Could you …?
Could you please …?
私の英語の先生から聞いた話では、オーストラリアは(礼儀などが)カジュアルな国だそうです。
そのため、特に日常的な会話の場合は、顔を合わせたことがあったり、互いの名前を知っているような相手なら、ほぼたいていの場合 Can で大丈夫(というかナチュラル)というのが、私自身の肌感覚です。
また、シチュエーションとしては、「話の流れから相手がそれをやるのが自然」というケースの場合は、Can you …? で大丈夫です。
ただ、国や場所柄によって、このあたりの感覚は違うかもしれません。
また、特にビジネスメールなどの改まった文面の場合は、Could の方が好まれます。
さらに、相手の意向を伺いながら丁寧なお願いをしたいのであれば、Could you …? の代わりに
となります。
Would you mind ~ing ?
誰かに突然、ちょっと一手間かけさせることをお願いしなければならない場面が、あるかもしれません。しかも相手が見知らぬ人だったり、それほど親しくない人だったりすると、「Can you …? と聞くのはちょっとぶしつけ?」なんて気がしちゃいますね。
そんな時の、丁寧なお願いのしかたとして、以下の言い方があります。
mind は、もともと「気にする」「いやだと思う」という意味の動詞です。
Would you mind ~ing? の本来の意味としては、「~するのはいやですか?」みたいな言い回しですが、これが、何かを相手にお願いする時の慣用表現となっています。
日本語風に言えば、「~していただいても大丈夫ですか?」みたいな感じでしょうかね。
例文)
Would you mind closing the window?
窓を閉めていただけるでしょうか?
Would you mind taking a photo of us?
写真を撮って頂いてもよいでしょうか?
I was wondering if you could …
さらに、相手に何かお願いをしたい時、相手に手間取らせたり、気軽に頼みづらいことをお願いする場合、こんな表現があります。
I was wondering if you could …
wonder は、「~はどうかなと思う。」「~はどうだろう?」という意味で使われる動詞ですが、このようにまとまった慣用表現で、非常に丁寧な、ちょっと遠まわしの「お願い」の表現になります。
「相手が本来その手間をかける筋合いはないのだけど、やってもらえたら助かる」というようなお願いごとをするのに適しています。
日本語風に表現するなら、「~していただけるでしょうか。」「~していただけるとありがたいのですが。」みたいな感じですね。
例文)
I was wondering if you could help me move home next Sunday.
もしできたら、次の日曜日に引っ越しなんだけど、手伝ってもらえるかなぁ。
I was wondering if you could give me some advice on how to start my new business.
私の新しいビジネスの始め方について、何かアドバイスをいただけたら、たいへんありがたいのですが。
If it’s not too much trouble …
相手に何かをお願いする時、「もし手間でなければ」と前置きをすることで、失礼のないよう配慮する場合もあります。
「もし手間でなければ、~していただけますか?」と言いたい時は?
if it’s not too much trouble, would/could you … ?
※ trouble = bother も可
と言った言い方があります。
例文)
If it’s not too much trouble, would you proofread my resume?
もしも面倒でなければ、私の履歴書を校正していただけますか?
A: “Would you like a cup of tea?”
B: “Only if it is not too much trouble.”
「お茶をいかがですか?」「もしもお手間でなければ(いただきたいです)。」
他にも、「面倒をおかけしてすみませんが、~していただけますか?」といったお願いのしかたもあります。これについては、以下の過去記事をお読みください。
お願いごとをする:ask a favour
「お願いがあるんだけど…。」「ちょっとお願いしてもいいでしょうか?」など、何かお願いしたい時に、まずそういって切り出す時もありますよね。
そんな言い方としては、
Can I ask a favour?
Could you do me a favour?
I was wondering if I could ask you a favour.
「お願い事をしてもいいでしょうか?」
など。下へ行くほど丁寧な言い方になります。
ただし、何かを人にお願いしたい時、「お願いがあるんだけど。」と言われても、多くの人はその内容が何かわからないと、返事がしづらいものですよね。
そのため、会話術としては、すかさず「何をお願いしたいのか」を続けて説明するのがよいと思います。
このような場合の会話については、BBC Leaning English の以下のページが参考になります。
How to – Asking a favour | BBC Leaning English archives
realmedia または mp3 で音声を聞くとともに、pdf のスクリプトを参考にしてください。
会話の中で、“I was wondering if I could ask you a massive favour…” と切り出した後に、どんなふうに、どんなトーンで、具体的な「お願い」をするのか?がわかります。
(会話の音声は速くて、聞き取るのは結構難しいです 汗)
メールでお願いする時
メールなどの文面で何かを依頼する場合も、基本的に以上に紹介した言い方は使えます。
他に、特にビジネスメールなどで使われる定型表現として、
I would appreciate it if you could …
※ 会話やカジュアルな表現では、I would = I’d と省略される
というのがあります。
この表現は、「もし~していただけたら、ありがたいです。」というようなニュアンスです。
口頭のやりとりで使わない、というわけではありません。が、特にメールでは、相手に何かを依頼する文面の時に使われる表現の一つなので、覚えておくと便利です。
特に、appreciate it を忘れがちなので、注意したいですね。
例文)
I would appreciate it if you could provide me with any information about it.
もしもそれについて何か情報をお知らせいただけたら、ありがたいです。
I would appreciate it if you could give me some feedback on it.
それについて何かフィードバックをいただけたら助かります。
I would appreciate it if you could reply to me about it by 15 November.
その件について、11月15日までに返信いただけたらありがたいです。
Could anyone help me with this problem? I’d really appreciate it.
誰か私のこの問題について、助けれくれませんか?(そうしたら)本当にありがたいのですが。
お願いする時のコツ
これは英語に限らないかもしれませんが、やはり何かを「お願い」する時は、相手に断れる余白を残す必要がありますね。
そして、できるだけ何を頼みたいのか、なぜなのか、を、早い段階で具体的に伝えること。
これは、決まり切った言い方を覚えさえすればよい、というものではありません。相手がどんな情報を必要としているか?を考え、相手の立場や状況を思いやって、話を進めていくことが重要なのだと思います。最終的には、「英語力」というより、「想像力」や「表現力」の問題かもしれません。
たとえば……。
Anthony, I have a favor to ask you… by any chance could you cover for me at the client dinner tonight? I’m not going to be able to break away from the office.
アンソニー、お願いがあるんだけど……もしできたら、僕の代理として今夜、クライアントとの夕食に行ってくれないかな。僕はオフィスを離れられなさそうなんだ。
こんなふうに言うと、嫌味がないし、相手もお願い事を理解した上で、自分に可能かどうかを考えることができますよね。そしてそこから、詳しい話を続けていくことができます。
上の例文は、以下のサイトから引用しましたが、
Asking for a Favor: The Three Keys | Harvard Business Review
人に何かを頼む時のコツについて、参考になるコラムです。読むとためになりますよ!
まとめ
今回は、英語で人に何かをお願いする時、シチュエーションに応じた英語での表現をまとめました。
一つ気をつけないといけないのは、英語で言う時、なんでも丁寧に言いさえすればよい、というものでもないということです。
たとえば、何度言っても子どもが言うことを聞いてくれない時、
Could you PLEASE put away your clothes?
自分の服は自分で片づけてくんない!?
なーんて言い方をします。この時、PLEASE を強調して言うんですが。
文字面としては「丁寧な表現」なのですが、実は嫌味や苛立ちが含まれた言い方なんです。
何かをお願いする時だけに限りませんが、英語では、声のトーンや表情、文脈、相手との距離感などが非常に大切。「とりあえず丁寧な言い方にしておけばいいだろう」という考えでは、誤解を与えてしまう可能性もあるかも?
今回紹介した表現はどれも基本的なもので、頭に入れておくと役立つことは間違いありません。が、同時に、定型の言い方云々よりも、前後の文脈で、自分の気持ちを的確に相手に伝える努力や配慮ができるか。これも重要だと思います。
私達は英語ネイティブではないので、言葉上は不適切なことを言ってしまうかもしれません。その分、「相手の立場や状況を配慮する」という気持ちを常に持って、自分の持てる表現力を駆使して伝える、ということが大切な気がします。
外国語でのコミュニケーションと言うのは、奥が深いなぁ~、といつも思います。