このブログでもすでにたびたび取り上げてきた、子どもに英語学習に関する話題。
過去にもこんな記事を書きました。
学校教育を始めとして、日本の教育全般で、「子どもの英語学習の時期を早める」という傾向があります。
幼児や小学校低学年を対象とした、英語関連の習い事や、英語教材も人気ですよね。その根底には、「英語学習を始めるのは、早ければ早いほどよい」という考え方があると思います。
私達大人世代は、ほとんどの人が中学一年生で本格的な英語学習を始めたと思います。その結果……、英語が話せない。
「中学生からでは、遅かったのでは!?」
「もっと小さいうちから英会話を練習しておけば、ペラペラになれたんじゃないか?」
という思いも、正直あると思います。その結果、子どもには早いうちから英語を学習させよう、という考えに至るのかも。
私達家族は4年前オーストラリアにやってきて、「英会話」も含め、暮らすために「使える英語」をマスターせざるを得なくなりました。当時我が家は、『幼児期の息子』『小学6年生の娘』『大人(40歳)の夫と私』という、それぞれまったく異なる成長段階にあり、それぞれの状況で『英語学習』と向き合ってきました。
その経験から、「英語を学ぶのは早ければ早いほどよい」という言葉に対しては、私なりに色々と思うことがあります。
今回は、「大人になって英語を使う」ことを考えた時、子どもの英語教育は『早ければ早いほどよい』というのは本当なのか?ということを、考えてみたいと思います。
ちなみに私自身は、英語教育や言語学習の専門家ではまったくありません!自分自身の経験から感じたことですので、「こういう見方もあるんだな」と思って読んでもらえたらうれしいです。
「早ければ早いほどよい」は間違い?研究より
一般的に、日本では半ば当たり前のように、「子どもに英語を学ばせるのは早い方がよい」と考えられている面がありますが、そもそもそれは本当なんでしょうか?
ちょっとネットで調べたところ、こんな記事に行き当たりました。
早ければ早いほど良いのでは?早期英語教育の落とし穴|子ある日和
「子ある日和」という子育て系情報サイトの記事で、「子ある日和編集部」による執筆です。
この中では、ドイツで行われたある調査結果が紹介されています。中等教育(日本で言えば中学生くらいか?)の子どもの英語学力を調査していますが、小1から英語学習を始めたグループと、小3から始めたグループとを比較した結果、小3から始めたグループの方が、英語の成績が良かったそうです。つまり、「『早く英語学習を始めた方が、後々の英語力がアップする』とはいえない」という結果になりました。
その理由と考察については、記事本文に書かれているので、そちらをご参照ください。
→ 該当サイトは、2019年1月にて閉鎖されたようで、上記リンクが切れていますが、本記事の主旨を考慮しこのまま残しておきます。
もう一つ、こんな記事もありました。
“早ければ早いほど良い”の落とし穴 賢く学ぶ早期外国語教育|読売オンライン
こちらは、原田 哲男さんという、早稲田大学教育・総合科学学術院教授が書かれた記事です。それによると、台湾の研究結果では、英語の早期教育を受けた大学生と、中学以降に英語学習を始めた大学生で、リスニング能力に差がなかったそうです。またご自身の研究でも、RとLの聞き取り能力について、早期英語教育を受けた学生と、中学で英語学習を始めた学生で比較したところ、実は早期学習者の方が劣っていた、という結果がでたそうです。
つまり、幼児期にネイティブの英語を聞き取る能力をつけた方が有利、と一般的に思われているけれど、「リスニング」の分野においても、早期教育が効果的とは言えない、と結論付けられます。
こちらも、詳しくは記事本文をお読みください。
言語学の分野では、「言語学習には臨界期がある」という説が一般的のようです。その臨界期がだいたい10~12歳くらいまでと言われ、それ以前ならば、子どもはその言語に触れているだけで、ネイティブ並みにしゃべれるようになる、と言われます。
私自身、息子や、周りの子ども達が英語環境に入っていく様子を見て、そのことをすごく実感します。
が、これらの記事によると、やはり「英語環境の中で英語を学ぶ」のと、「母国語(日本なら日本語)が圧倒的にメインの環境の中で、第二外国語として英語を学ぶ」のとでは、条件が異なるということです。
それもまた、大変納得ですね。
ただし、どちらの記事も、英語の早期教育そのものを否定しているわけではありません。
ただ、週1,2回、数時間程度「英語に触れる」だけでは、早期教育の効果を生み出すには量が足りない、ということのようです。
幼児期より、中学以降の勉強の方が影響が大きいのでは
ここからは、私自身の意見になりますが、
長い目で見た場合、幼児期に「英語を学習した」か否かよりも、その後の何年と続く人生の中で、継続的に「英語学習」を行ったかどうかの方が、最終的にその人の英語スキルに及ぼす影響は大きいんじゃないか、と思います。
つまり、「幼児期に英語を覚えたとしても、その後の教育の中で特に英語を勉強しなかった」人がいるとすれば、たとえ「英語の早期教育を受けなかったとしても、中学生から一生懸命英語を勉強した」人の方が、社会人になった時の英語力は高い、と私は思うのです。
確かに、英語ネイティブの発音感覚を身につけるなら、幼い時の方が断然有利。それまで英語発音に触れたことがなく、大人になってから本格的なネイティブ発音を獲得するのは、相対的に困難だということは、私自身とーってもよくわかります。
でも、大人になって社会の中で「使える英語」を考えた時、ネイティブ発音であること以外に(あるいは発音よりも)重要なポイントはいっぱいあります。
たとえば、以前こんな記事を書きました。
「子どもに英語ができるようにさせたい」と思う多くの日本の大人たちは、子どもを「英語ネイティブ」にしたいわけではないと思います。日本人でありながら、ビジネスや国際交流などの場面で、英語でコミュニケーションをできるように、ということを望んでいるのですよね?
社会人として、相手との関係性を考えた、適切な挨拶ができ、必要な話題に対して適切な受け答えができること。
英語で発信された情報を適切に理解し、また英語で自分の意見が適切に述べられること。
それが、私達日本人に求められている「英語力」じゃないでしょうか?
そしてそのほとんどは、「単語や文法、表現を覚えること」「繰り返しの訓練・練習」「経験を積むこと」によって、身についていくと思うんですね。逆にどんなに「英語のセンス」があっても、そうした地道な「学習」をせずにそのような英語力を身につけることはできない、と私は考えます。
特に、中学生以降の学習というのは、重要だと思います。というのは、中学・高校生になると、幼児期や小学生の時に比べ、(当たり前ですが)さまざまな面で理解力や知的能力も成長しています。言葉で表現できる内容もずいぶん深くなります。その「より高いレベル」の理解や表現に対応した英語を学んでいくことが、「大人になった時に使える英語」につながると思います。
とはいえ、多くの人が、「学校であんな難しい英文法を覚えたのに、『子どもでも言える』簡単なことが英語で言えない!(涙)」と思うでしょう。
実際に、私も思いました(笑)。パースに来て、本当に英語で言えないことだらけ。
でも、それは単に、言い方を学ばなかったから。
逆に言えば、一つ一つ覚えて行けばしゃべれるようになります。とにかく量をやって、覚えて、慣れていく。幼児期を過ぎたら覚えられない、というものでもありません。
逆に、社会的なコミュニケーションに対応できる英語力を身につける時、それを支える『基礎』というのは、やはり「文法の知識」であったり、「読解力」「表現力」であったり、英語に限らない幅広い「社会の知識」であったりする、と痛感しています。そういう部分を高めるのは、幼児期では無理。ティーンネイジャー以降の自主的な学習が大きく影響します。
実際に英語ネイティブのティーンネイジャーも、そのような学習をしていかなければ、高い水準の英語力を身につけることはできません。
10代以降の英語学習が重要な、もうひとつの理由
また、ティーンネイジャー以降になると、自分から目的意識を持って勉強に取り組むことができるようになってきます。将来を考え始めたり、自分の趣味や好きなことの関連から、「英語を学ぼう」という意欲を持つ子も出てくるでしょう。
「●●のために英語ができるようになりたい!」と思う事は、英語を学ぶ上でかなり重要な要素ではないか、と私自身は感じます。そして目標に向かって自分自身で勉強していくことが、とっても力になるように思います。
実際に、中学生以降に英語を学び始め、高い英語力を身につけている例はあります。
たとえば、テニスで世界的に活躍されている錦織圭選手は、英語力が高い日本人としても有名ですよね。インタビューにも、たいへん流暢な英語で的確に答えています。
彼は正真正銘日本語ネイティブ。13歳の時に単身アメリカに渡ったそうです。それ以前の英語歴はちょっとわかりませんが、日本語環境で過ごしていたことは確かでしょう。
そこから彼は、英語環境に身を置き、テニスの技術を磨くと同時に、高い英語力を身につけていったんですね!
あるいは、俳優として海外で活躍している、真田広之さん。先日、オーストラリアのテレビで、偶然彼が出演したイギリス映画を見ましたが(どんな映画か?については、こちらの記事を)、英語のセリフをとても滑らかにしゃべっていました。すごい!ネット上には、インタビューに英語で答えている動画もありました。
真田さんの経歴を調べてみると、若いうちは国内で活躍しましたが、なんと40歳(!)でイギリスに渡り、海外進出を始めたそうです。現在は、ハリウッドでも大活躍されています。
40歳!やー私も、人生これからだ!!
他にも、大学生や大人になってから海外に来て、そこから高い英語力を身につけ、こちらで頑張っていらっしゃる日本人の方は何人もいます。そう考えると、幼児期に英語をやったかどうかよりも、以降の人生で「自分自身でどれだけ勉強したか」の方が、大きく英語力を左右すると言えるんじゃないでしょうか?
幼児期に英語に触れるメリットもある。
もしも幼児期から英語教育を始めて、毎日十分な時間の英語学習を、大人になるまでずーっと続けて行けば、飛びぬけて高い英語スキルを身につけることができるんじゃないか、と思います。特に発音については、小さい時に身につけ、それが維持できれば、有利かもしれません。
ただ、現実問題として、子どもは英語以外にも学ばなければならないことが、たくさんあります。
他のことに、より興味を持つかもしれないし。
そもそも、遊ぶ時間も、ただぼーっとする時間も、子どもには必要!
子どもの個性や、「他の部分の成長」とのバランスも考える必要があると思います。
ただ、私自身が「早いうちから英語を学ばせるのがよい」と言える点があるとしたら、こんな点についてです。
まず、小さいうちから英語を学ぶことによって、「英語を話すこと」や「海外の人と接すること」に対する苦手意識がなくなるかもしれません。
特に日本のように、日常的に『外国人』と共に過ごす機会が少ない環境では、大人になればなるほど「英語を話す」ことに対してハードルが高くなりがち。感性が柔軟な幼い時から「英語」に触れることにより、「英語を使って海外の人とコミュニケーションする」ことに抵抗がなくなるなら、それは後々に良い影響を与えると思います。
また、「英語」を通して、言葉だけでなく、「海外の文化」を知ることができます。
たとえば、海外のアニメや映画を通して、日本と異なるライフスタイルを知ることができます。英語の子ども向けアニメでは、さまざまな肌の色・髪の色を持った登場人物が出て来ます。
「自分と違う」世界を柔軟に受け入れる感性を育てることは、とても価値のあることではないでしょうか。たとえ将来、英語を使うことがなくても、日本で生きるとしても、大切なことだと思います。
まとめ
というわけで、私自身は、特に就学前の子どもに関しては、将来「英語ができるようになる」ための早期教育は、あまり意味がない……は言い過ぎだとしても、そこまで「早ければ早いほど大きなメリットがある」「早くなくてはダメ」とは思いません。
小さい子に英語を教えるとしたら、「英語ができる」ことそのものを目的とするより、感性を刺激する素材として、英語を身近に置いてみる。そして、親子で楽しんでみる。こういうスタンスがいいのではないかと思います。
まず親が「洋楽を聞く」「英語のテレビを見る」「英語の本を読む」「英語の歌を歌う」など、子どもと同じ空間で英語を楽しむことを提案したいです。英語が生活の中にあることが『自然』になれば、子ども自身が英語を身近に感じ、将来的に英語の学習に取り組みやすくなるかもしれません。
以下の過去記事では、子どもと一緒に大人も楽しめる、英語の歌やYouTubeなどを紹介しています。
https://hanasu-eigo.com/2017/04/09/1132/
最終的には、子どもが成長していく中で、「本人がどのくらい英語に取り組んだか」が大きいと思います!自分も含め、大人にも言えることだと思います。