私はオーストラリア・パースに4年以上住んでいます。
その中で、老若男女、さまざまな日本人の方にお会いする機会がありました。
自分が慣れ親しんできた言葉ではない「英語」という言葉で、みなさんそれぞれにここで生活しています。
誰しもが、英語にまつわる様々な苦労を乗り越えて、今ここにいるのだろうな、と思うと、どんな立場の人であろうと、尊敬したい気持ちになりますね。
その中で、「私は英語がペラペラでーす!」なんて自分で言う人はさすがにいないんですが(笑)、それでもわりと躊躇なく英語を話す人(英語のレベルに関わらず)と、「私は英語がヘタで……」「英語が話せなくて……」と遠慮がちな姿勢を取る人(英語のレベルに関わらず)と、わりと二つのタイプに分かれると感じます。
日本で英語を学んでいる人々の中にも、「英語ができるようになるのがうれしい」「英語も英語で勉強するのは面白い」と感じる人もいれば、事情があってやむを得ず英語を勉強しているけれど、本当は「英語を話すのが苦痛だ」「できれば日本語で済ませたい」と思っている人もいるでしょう。
やはりどちらかといえば、前者のタイプの方が、英語を学ぶことに対するストレスも相対的に少ないだろうし、結果的に上達しやすいのかな、と思います。
今回は、完全に主観的な内容ですが……。「英語がうまくなりやすい人って、どんな人?そうでない人とどう違う?」という点について、私が感じたことを書いてみたいと思います。
本を読むのが好きな人
「文字を読むのが好きな人」「本を読むのが好きな人」っていますよね?
ジャンルはともかく、文字を読むのが好きな人……逆に言うと、文字を読むのが苦痛じゃない人。
そういう人の方が、やはり「読むのが好きじゃない人」に比べたら、英語がうまくなる確率は高いと思います。英語に限らず、どの言語でもそうかもしれませんが。
というのは、まず「語彙を増やす」ためには、文章を読むことが欠かせません。
英語のうまい人が書いた「英語の文章」を読むことで、豊富な語彙や英語表現を知ることができます。英文に触れる量が多いほど、豊かな英語表現を身につけられることは、説明するまでもありませんよね。
英語に不慣れな初心者にとって、わけがわからないまま字面を追っているのは、ある種の苦痛ではあります。
ただ、本好きな人、活字を読むのが好きな人は、わからないなりに文字を眺めることに抵抗感がなかったり、辞書を引くことも苦痛ではないでしょう。拒絶せずに、英語を自分の生活の中に取り入れて行ける人の方が、英語学習には有利です。
また、自分の好きな(読み物の)ジャンルを持っている、ということも、英語に触れていくためには大切なことだと思います。
たとえば英語の『小説』は楽しめない、という人でも、洋楽が好きで、好きなアーティストに関するゴシップニュースなら読む気になれる、という人もいるかもしれません。あるいは、テニスのことはよく知っていて予備知識があるから、英語の記事を読んでも理解しやすい、とか。
私の場合は、料理のレシピ本から入りました。料理は私にとってとても身近だし、写真を見ながら理解できる部分もあるので、本を眺めるだけでも楽しめました。最初は内容まで正しく理解できなかったけれど、だんだんと英文を追うことに慣れて行きました。
うまくできなくても気にしない人
英語を学習する中で、特に私達日本人の大人がニガテなことといえば、英語で『話す』ことではないでしょうか?
辞書を使えば、「英語を読む」ことはできる。
本やお手本を見ながら調べれば、何とか「英文を書く」ことはできる。
でも、「英語で会話する」となると、まずスピードが速すぎて、何て言われているのかわからない。たとえわかったとしても、言いたいことを正しい文法でスラスラと言えない!発音だってヘタだし……。
というところに、「英語」のハードルの高さを感じてしまう人は多いのではないでしょうか。
大人になり、社会の中で、さまざまな複雑なやりとりをしてきた私達にとって、言葉が『英語』になったとたん、コミュニケーションの幅がものすごく限られてしまいます。
シンプルで簡単なことしか言えない、ということに、ストレスを感じてしまいます。
誰もが当たり前にわかることがわからない、ということに、プライドが傷つくことも。
「こんな言い方であってるんだっけ?」「相手に失礼な言い方になっていないだろうか?」といちいち考えることは、ものすごく疲れます。
そうしたことから、「私は英語がうまくない」「私は英語がダメなんだ」と感じる人も多いと思います。
でも、それは正直、あたりまえのこと!
たぶん、英語を学び始めた最初は、誰もがそういう感情からスタートしているはずなんです。
ただ、「自分は英語がうまくないんだから、しかたがない。うまくないなりに練習していくしかない。」と開き直って、一生懸命話していく人の方が、うまくなる確率は高いと思います。
私達日本人が「英語を話すのがヘタ」なのは、「英語を話すという経験が少ないから」ということについて、以下の過去記事で書きました。
英語は、話してみてこそうまくなる!
間違ったことを言ってしまう。スムーズに受け答えできない……そういった状況に「やだなぁ」「気まずいなぁ」と思ってしまうのは、誰にでもある感情ですが、あまりくよくよ悩み過ぎずに数をこなしていける人の方が、英語はうまくなれるように思います。
人のマネが上手い人
「英語がうまい」と言った時、多くの人は、正しい「単語」と「文法」と「発音」でしゃべれることを思うかもしれません。
でも、私自身が実際に英語を使ってみて思う事は、「『英語』とは、特に会話では、単に正しい単語と文法を使ってセンテンスを組み立て、正しい発音で言うだけではない。」ということです!
たとえば、”I know,” という初歩的な表現一つとっても、言い方によっては相手に共感を示すこともできるし、威圧的な雰囲気に受け取られてしまうこともある、という例を、以下の記事では書きました。
その差を分けるものは、表情や声のトーン、タイミング、話の流れなど……いわゆる「ノリ」のような部分で解釈される場面も、多いと思います。
そんな部分の表現については、「英語ネイティブの人は、こんな時、こんなことを言うんだ」ということをよく観察し、それを素直にマネしてみることで身についていくんじゃないか、と思います。
「この言い回しは、~という意味がある」
ということを、テキストや辞書から覚えるのはもちろん大切です。
が、英語はコトバであり、コミュニケーションのツール。
頭で知識として考えるだけではなく、ネイティブの人がどんな文脈でどんな言葉をどんな言い方で言うのか、をよく観察してみることも、英語がうまくなるためには有効だと思います。
そして、思い切ってマネしてみる!
日本では、英語圏の人がやるような話し方をすると、「気取っている」とか「やり過ぎだ」とか言われて、茶化されたりする風潮がありますが、本当にいざネイティブ環境で話していくとなったら、そうしなければ逆にうまく伝わりません。話し方そのものを真似るということは、結構大切なことじゃないかと、私自身は思います。
ただ、言葉の意味などをよく確かめずに、「なんとなく誰かがこんな言い方してたから~」と思って使ってしまうのは、危険な場合もあるかも?
実は自分の意図とは違う意味が伝わってしまい、相手に誤解を与えてしまった、なんてことにならないように、注意しましょう(まあ、それも勉強になりますけどね 笑)。
まわりくどくない人
英語の会話では、英語そのものだけでなく、物事の伝え方も大切だな、と感じます。
特に、質問をされた時には、直接答えをまず言うこと……。相手が欲しい答えを真っ先に言ってあげることが、英語のコミュニケーションにおいては大切なポイントといえます。
だから、まわりくどい言い方を好まない人の方が、英語ではむしろ意図が伝わりやすいかもしれません。
たとえば、「紅茶いかがですか?」と言われた時、日本人なら、
と言う感じで、それとなく断るのが礼儀だと思うかもしれません。でも英語でしたら、
“No, thanks. I’ve stopped taking caffeine. I used to drink tea, though.”
いいえ、結構です、カフェインを控えているので。以前はよく飲んでいたんですけど。
とか、せいぜい、
“I’d love to, but I can’t have tea today.”
そうしたいんですが、今日は飲めないんです。
くらいに短くワンクッション入れて、すぐさま Noであることをまず伝えます。
そしてその後に理由を付け足したり、
“Thank you for asking me.”
“It’s really nice of you to ask me.”
聞いてくれてありがとう。
のように、フォローを付け足すのが会話術のようです。
確かに日本人の感覚では、特に断りたい場合は、単刀直入に「結構です。」というのはむしろ失礼に感じるかもしれません。そのため、日本社会なら、結論をハッキリと言う人よりも、ぼかした言い方をする人の方が、受け入れられやすいかもしれません。
でも英語では逆に、ハッキリと明確に意思を伝えて、フォローする、という言い方の方が、スムーズに意思疎通できるように思います。
違うやり方を受け入れられる人
これまでに書いてきたように、「英語のコミュニケーション」というのは、日本語のコミュニケーションとは異なる部分が多々あります。
日本では当たり前にこういう言い方をする、ということが、英語では逆に相手を苛立たせたり、誤解を与えてしまうこともあります。
反対に、英語では当たり前の表現が、日本人にとっては「そんな習慣がない」というものもあります。
これは、以前ある日本人の年配男性と話していた時のこと。
「オーストラリアでは、お店に入ったら店員さんと気軽に挨拶するし、ぶつかったりしたら Sorry! と声を掛け合うのが習慣ですね。」という話をしたら、その方は首をかしげていました。
「私はずっと、『大人の男が知らない人とむやみにしゃべるものじゃない』と教えられて育ってきたから、難しく感じてしまう。」
とその人は言いました。
なるほどなぁ~。そうだよなぁ~。と思いました。
習慣や価値観と言うものは、私達が自覚している以上に、人の行動にものすごく大きな影響を与えているものなのでしょうね。
そして、その人自身が、それが良い、と選んだわけでもない。
ただ私達は、「それがよいことだ」と教えられ、それを信じて、その通りにやってきたのです。
長年そうしてやってきたことを変える、ということは、特に歳を取ればとるほど、困難なことなんだな……なんて考えさせられました。
そういう人のことを、「頭が固い」「古臭い」と責めることはできないな、と思います。これまでの日本社会の中で、一生懸命順応して生きてきた証拠です。
それでも、「英語を学ぶ」という観点で考えたら、今までの自分が当たり前に信じてきた価値観から離れ、「英語ではこういうやりとりをするんだな」「英語ではこういう考え方なんだな」と素直に受け入れられる人の方が、やはり英語はうまくなるのではないでしょうか。
英語がうまくなる、というより、英語のコミュニケーションにより早く適応することができ、海外の人と英語を使ったやりとりがよりスムーズに行く可能性は、高まるのではないでしょうか。
まとめ
「英語がうまくなりやすい人の特徴」として、5つのポイントを上げてみました。
しかし、当てはまらない人は英語がうまくなれないか、といったら、そんなことはまったくありません!
私が伝えたいのは、「こういうことを少し意識することで、『英語』に対する心の中のハードルを下げて行けるのではないか……」ということです。
人それぞれ、向き不向きはあるかもしれません。が、今はニガテだな、と思うことも、これらのポイントや考え方のどれかを、少しだけ自分の行動に取り入れてみることで、ちょっとずつ変わっていけると思います。
『英語を話す』ということは、「今まで日本社会の中で生きてきた自分」とは違う自分になる、ということかもしれない。そんなふうに私は感じます。違う自分になることは、少し勇気がいることかもしれませんが、「自分の中の違う自分」を発見することも、英語を学ぶ楽しさの一つだと思います。