日本国内で海外の人と英語で話す時、日本の法律や一般的な街のルールなどを説明することがあるでしょう。
特に相手が海外から一時的に訪れている観光客などで、日本のことをよく知らない、日本語もあまり読めない場合、「〇〇禁止」などの看板も読めなかったりします。
私の住んでいるオーストラリアでは、電車の中でも大きな声で携帯でしゃべっている人は普通にみかけます。が、日本ではマナー違反と思われます。
また、こちらの博物館などは、特殊な場合を除き、内部の撮影を禁止されることは滅多にありませんが、日本では「撮影禁止」「カメラ持ち込み禁止」が結構ありますね。
他にも、「土足禁止」「刺青のある人の入浴禁止」「子連れ禁止」などなど……。
海外の人にはピンとこないことも、日本にはたくさんあります。そんな時、「~は禁止されている」「~を禁止する」ということを、英語で教えてあげるには、どう言ったら伝わる?
……と思って、「禁止する」を和英辞典で調べてみると、prohibit、ban、forbid… といった単語が出てきます。どれを使ったらいいの?違いは?と迷う人もいるでしょう。
しかし!
私が実際にオーストラリアに住んでみて思ったのは、英語の会話では、必ずしもそれらの単語を使わずに、「禁止する・されている」を表現することも多い、ということです。むしろ、英語圏の日常会話の場面では、その方がナチュラルに聞こえるかもしれません。その上で、「禁止」という英単語の知識を増やしていくと、さらに表現が広がります。
というわけで、この記事では、英語で「~を禁止する」「~は禁止されている」という表現のバリエーションを、例文とともに紹介したいと思います。
「禁止されている」簡単かつナチュラルな英語表現
日常会話で、「~禁止されている」と言いたい場合、一番簡単なのは、
You can’t ~(動詞)
~してはいけない、~できない
という言い方です。
え、カジュアルすぎる???とはいえ、実際の簡単な英会話では、まず多く使われる表現です。
また、もうちょっと「禁じられている」=「~は許可されていない」というニュアンスを込めたかったら、
You are not allowed to ~(動詞)
You are not permitted to ~(動詞)
~することは許可されていない。
という言い方もあります。be allowed / be permitted は、allow/permit(許可する)の受け身形(=許可される)ですね。これもナチュラルで、口語表現でもよく使われるし、メールや文書のお知らせでも通用する表現です。allow は発音注意!
例えば、
「ディズニーランドへの食べ物の持ち込みは禁止されているよ(※筆者注:本当かどうかは不明)」
と言いたい場合、定番の言い方は、
You can’t bring foods and drinks into Disneyland.
You are not allowed to bring your own foods and drinks into Disneyland.
また、主語を変えて、
Disneyland doesn’t allow you to bring your own foods and drinks into the park.
ディズニーランドは、食べ物飲み物の持ち込みを許可していない。
のように言うこともできます。これもナチュラルです。
また、英語にする時のポイントとして、たとえば「土足禁止」を英語で説明するような場合、直訳しようとすると、
You can’t go inside with your shoes.
靴を履いたまま中に入れません。
と思うかもしれません。これは、意味的には間違いではないかもしれませんが、
You have to take off your shoes (before you go inside).
You should take off your shoes (before you go inside).
靴を脱いでから中に入ってください。
のように、「どうしなければならないか」を示したほうが、海外の人にはわかりやすいと思います。
このように、「禁止する」という日本語にこだわらず、「~はできない、~してはいけない」「~すべき、~しなければいけない」を明確に示すことが、英語に訳す際のポイントと言えるでしょう。
法律で禁じられている
オーストラリアでは、18歳から成人と認められ、お酒を買ったりバーで飲めるようになります。ですが、日本の法律では、「お酒は20歳になってから」ですよね。
このように、「20歳未満の飲酒は禁止されている」と言う場合も、先に挙げたように、
People under 20 can’t drink (alcohol).
People under 20 aren’t allowed to drink (alcohol).
20歳未満の人はお酒を飲んではいけない。
※文脈で、drink = お酒を飲む という意味になるので、alcohol を省略することも多い。
で十分カバーできます。
が、あえて明示的に、「法律で禁止されている(守らないと罰則や罰金がある)」ことを言いたい場合は、illegal = 「違法な」という言葉を使うことができます。
It’s illegal for people under 20 to drink alcohol.
20歳未満の人がお酒を飲むのは違法である。
Drink driving is illegal.
飲酒運転は違法だ。
また、ban は、「公的・法的に、禁止する」という意味の動詞です。この単語を使って「~を禁じている」「(受け身で)~は禁止されている」と言うこともできます。
Japanese law bans drinking under 20.
日本の法律は、20歳未満の飲酒を禁じている。
In Australia, all overseas travel is currently banned.
オーストラリアでは、全ての海外渡航は現在禁止されている。
ban は、動詞だけでなく、名詞でも使われます。たとえば私の住む西オーストラリア州では、夏の時期には
Total Fire Ban
というのが出されることがあります。これは、「屋外での火の使用禁止」のこと。西オーストラリアでは、夏の乾燥して暑い時期は、わずかな火が大規模なブッシュファイヤーに発展してしまうことがあるため、火の使用が厳しく禁止されます。この ban が出されると、屋外ではキャンプファイヤーやたき火はもちろんのこと、BBQの炭火、溶接機や研磨機などの使用も禁じられます。
また、昨年は、環境のためにプラスチックを削減する動きが世界的にあり、西オーストラリア州でも、お店が使い捨てビニール袋を購買者に提供することが禁止されました。これは、
Plastic Bag Ban
と言われたりします。
また、今は新型コロナウイルスのため、オーストラリア政府は、国民および永住者の海外への渡航を禁じています。このことをメディアなどでは、
Travel Ban
と表現されています。
「禁じる」prohibit のニュアンスは?
Prohibit は、「禁止する」、つまり「(人が)何かをするのを拒否する、許さない」という意味ですが、公的な意味合いが強く、従わない場合何かしらのペナルティが伴う可能性を示唆します。Ban とかぶる場合も多いです。が、必ずしも「法律違反」を意味しない場合でも使われます。たとえば、
Alcohols & drugs are prohibited on this property.
お酒とドラッグの使用は、この建物内では禁止されています。
The local government prohibits parking on footpaths and verges.
地元の自治体は、歩道とバージ(沿道の芝生や植え込みが施されたエリア)に駐車することを禁じている。
などのように使われます。たとえ法律で禁止されているわけではなくとも、建物や土地の管理者が「禁止して」おり、従わない場合、セキュリティによって強制退去したり、警察に通報したり、車をレッカー移動するなどの措置を取る可能性がある、というくらいの強い「禁止」です。
また、空港でよくあるのは、「持ち込み禁止の物品」を、prohibited items といいます。
Prohibit は、ちょっとかしこまった文面などで “You are not allowed to … “ を意味する時に使われるイメージです。
他にも、「禁止する」という意味の英単語に、forbid があります。こちらも、ほぼ prohibit と同義語として使われることがあります。
ただし、Cambridgeの英語辞典の forbid の例文に、
I forbid you to marry him!
彼と結婚するなんて、許可しないからな!
とあるので、もっと私的な「禁止する」も言い表すようです。ただ、現代の日常会話のシチュエーションでどの程度よく使われる表現なのかは、ちょっとわかりません。
まとめ
英語で「~は禁止されている」と説明したい時、「禁止する」「禁止されている」という日本語の単語から、英語を組み立てて考えがちですが、英語で言う時は必ずしも ban や prohibit を使うわけではありません。
日常会話の中では、最初に挙げたように、
“You can’t … “
“You are not allowed to … “
で、簡単に言い表すことの方が多いように感じます。これが、今回の記事の一番のポイントです。
また、何かを「禁止する」ことに関する、日本語と英語の文化的な違いも、知る価値があると思います。
日本国内では、お店などがお客に何かをやめてほしい時、「~はご遠慮願います。」というようなソフトな表現をしますよね。そしてその意味の英語表示で、“Please refrain from …” というフレーズをよく見かけます。この refrain from … は、「~をしたいのをがまんする、あきらめる、自制する」という意味があり、法や公的私的なルールで「禁止する」のとは違い、「本人の自発的な判断で、それをしない」という意味になります。
私自身の感覚ですが、オーストラリアでは公共の場で人々に何かを「してほしくない」時、“Please refrain from …” という表現は滅多に見かけません。看板や標識などの場合は、端的に、
Do not smoke.(禁煙)
Do not enter.(立入禁止)
No alcohol(アルコール禁止)
No video(ビデオ撮影禁止)
のような簡潔な表現で表されます。あるいは、
No BYO accepted. (持ち込みのドリンクは受け付けていません)
We do not accept cash. (現金の支払いは受け付けていません)
のように、明確に断ります。こちらでは、法的に禁止されているか、あるいは権限のある人(土地の管理者やビジネスの管理者など)が禁止している場合は、「やっていはいけない」「できない」=禁止、となり、強さは違いがあっても、基本的に “You can’t … “ の意味になります。そしてそれ以外のことは、基本的には「個人の自由(=してもよい)」、という判断があるので、いちいち「こうしてください」「ああしてください」と注意や表示をすることはないです。
一方、日本の場合、法や管理者の権限による「禁止」の存在感が、オーストラリアに比べて『薄い』と感じます。個人的な感覚ですが……。そしてその代わりに、「個人の自発的な配慮・気配り・自制」を頼りに、遠回しに「禁止」を要求する、というパターンが社会の中でとても多くあると思います。 そのニュアンスを英語に訳そうとすると、“Please refrain from …” が多用されることになるのかな、と思いました。日本の文化とオーストラリアのような英語文化、どちらがよいというわけではないし、“Please refrain from … “ 自体が英語として間違っているわけではありません。ただ、オーストラリアでは、公共の空間の中であまりよく出てくる英語ではないし、何かを「してはいけない」場合に、そのような遠回しな表現はあまり使われないのは、事実です。
そうした「禁止」に対する文化面の違いも頭に入れておくと、英語のコミュニケーションにも役立つと思います。